ゴール期待値

近頃、サッカーの分析が盛んに行われるようになり、様々な手法がサッカーに用いられるようになってきた。

アメリカのMLBではデータ分析を活用したチームの強化やスカウティングが盛んに行われているが、サッカーも近頃は様々な指標が導入され、チームの分析や選手の評価が行われている。

野球に比べるとサッカーは不確定要素が多いが、そんなサッカーでも定量的に観測しようとする指標、「ゴール期待値(xG)」というワードをよく耳にする。

もともと「ゴール期待値」は「expected goals」として欧州を中心に使用されてきたが日本でも用いられるようになってきた。

今回はこの「ゴール期待値(xG)」について解説する。

「ゴール期待値(xG)」とは

「ゴール期待値(xG)」とは「あるシュートチャンスが得点に結びつく確率」のことで、0〜1の範囲で表した指標のこと。

サッカーのような得点の生まれにくいロースコアスポーツでは、試合の最終スコアのみではパフォーマンスを反映しない場合が多くある。そこで開発され、用いられるようになったのが「ゴール期待値(xG)」である。

「ゴール期待値(xG)」は基本的に「チャンスの質」を測る指標で、選手の能力やシュートの質を無視したもの。0は得点することが不可能なチャンスを表し、1はプレーヤーが毎回得点することが期待されるチャンスを表す。

例えばハーフウェイラインからのシュートは、ボックス内からのシュートほどゴールにつながる確率が高くない。「ゴール期待値(xG)」を使えば、実際にプレーヤーがこれらの各状況から得点する可能性を定量化することができる。あるボックス内からのシュートの期待値が0.1xGだとする。

これは、平均的なプレーヤーがこの状況下で10本のシュートのうち1本、つまり10%の確率でゴールを決めると予想されることを意味するのだ。つまり平均的な選手がシュートを打った場合のゴールになる確率を示し、チャンスの質を表す値と言える。

注意しなければいけないのは「ゴール期待値(xG)」はチャンスの質を測定しているだけであり、ゲームの結果を予想するものではないこと。昔から言われているように、ゴールは試合を変え、チームのプレーに影響を及ぼす

チームが序盤にリードを奪った場合、必ずしも多くのチャンスを生み出す必要はなく、残りの時間は相手が逆転を狙ってより多くのゴールチャンスを生み出すと予想されることが多い。

計算方法

シュートの距離、ディフェンダーの位置、パスの種類とスピード、シュートの種類、角度、その他様々な要素に基づいて、以前に記録された何千ものシュートと比較することによって算出される。

21−22年プレミアリーグ各クラブのゴール期待値

今シーズンのプレミアリーグのクラブにおいて算出されたゴール期待値と実際に生まれた得点を比較した表である。(Understatから引用)

リーグ優勝を果たしたシティのゴール期待値はリーグトップの98.8で実際の結果では99ゴールとなった。2位に終わったリバプールのゴール期待値は97.7となったが実際のゴール数は94となり4点ほどゴール期待値を下回った。アーセナルもゴール期待値69.2に対し実際のゴールは61とチャンスに対し期待されるゴールを記録することができなかった。

一方でレスターはゴール期待値52.9だったが62ゴールを期待した。この結果については後述のヴァーディの決定力の影響が考えられる。降格が決定したノリッジ、ワトフォード、バーンリー、17位で残留を果たしたリーズはゴール期待値をおよそ10下回るゴール数となった。

21-22年プレミアリーグの選手たちのゴール期待値

ゴール期待値は個人にも適用でき、今シーズンのプレミアリーグ得点ランクトップ10の選手達のゴール期待値は以下のようになった。(FOTMOBから引用)

23得点を記録し、得点王に輝いたサラーとソン・フンミンだが、ゴール期待値ではソン・フンミンが大きく下回った。ソン・フンミンはゴール期待値15.8に対し、23ゴールとその得点能力の高さを示す結果となった。

そのほかにもデブライネやヴァーディといった選手がゴール期待値を大きく上回る結果を残していることから難易度の高いシュートシーンでゴールを決めていることがわかる。