今シーズンも閉幕しシーズンオフに入る。各クラブのスカウトチームは既に水面下で目まぐるしく動いており、来シーズンのスカッド構築に向けて準備をしていることだろう。
オフシーズンで最も盛り上がる移籍に関しては、既にハーランドがシティに、ムバッペはまさかのPSG残留で波乱万丈な出だしとなっている。
そんな中でスカウト部門のスポーツディレクターは、移籍の契約を一つ交わすにも様々な条件が盛り込まれたり、あるいは自分から交渉しないといけない。今回は移籍に伴ってくる選手とクラブの契約(バイアウト条項、リリース条項、転売条項)について紹介していく。
バイアウト条項
選手がクラブと一定額で契約を解除する契約解除金というものがある。これはしばしばバイアウト条項と呼ばれる。
バイアウト条項ではリーグによっては付ける義務があるが、その場合クラブは将来的に残しておきたい優秀な選手に、現実的に不可能な額で設定している。これにより事実上の「非売品」となる。
しかしそんな「非売品」が買われたケースもある。当時バルセロナに所属していたネイマールだが、バイアウト条項の2億2200万ユーロ(約290億円)でPSGに移籍した。
これは決してバルセロナがPSGに対して移籍を認めたわけでなく、バルセロナが設定していたバイアウト条項を満たしたことにより交渉の余地もなくPSGに渡ったのだ。
言ってしまえば、バイアウト条項で設定された額を出すことで買い手からすれば選手をクラブに迎えられるので、選手保有クラブとしてはよほどのことがない限り、バイアウト条項を契約に入れたくはないだろう。
一方、選手や代理人にとって将来的なステップアップなど移籍を望む場合、契約にバイアウト条項が盛り込まれていることで所属クラブとの交渉を優位に運べるというメリットが生まれる可能性があるため、代理人たちが契約に盛り込むことを望むケースが見られる。
リリース条項
移籍で選手をクラブに迎え入れるときに一定の条件が満たされれば他クラブに売却するのを船主側と約束するというのがリリース条項というもの。一般的には一定の額以上のオファーが来れば、移籍を認めるといった額面上の条件が多い。
設定額によっては選手を引き抜かれないようにするための牽制にもなれば、ならないときもあるだろう。
実質的な効果で言うとバイアウト条項と何ら変わりはない。しかしこのリリース条項には条件発生時に必ず移籍しないといけない場合もあれば、クラブと選手間の合意の下で買い手クラブに移籍する場合もある。
5月上旬にファブリッツィオ・ロマーノ氏が「ビジャレアルのパウ・トーレスがマンチェスター・ユナイテッドに移籍するかもしれない」と示唆していたがここではビジャレアルが同選手に対して6000万ユーロのリリース条項を設定していた。
しかしクラブは選手を引き留めるために6000万ユーロを提示されても価格交渉するだろうと言われている。
Manchester United are discussing Villarreal’s Pau Torres as one of 3/4 options for the new centre back. No proposal made yet, as it depends on Erik ten Hag decision and Man Utd board changes. 🔴🇪🇸 #MUFC
— Fabrizio Romano (@FabrizioRomano) May 9, 2022
Chelsea are also monitoring Pau.
€55/60m release clause into his contract. pic.twitter.com/K3gItr1aoA
その他 転売条項
その名の通り、Aというクラブが選手をBに売却するが、将来的にBが他のクラブに売却(転売)するときにその間で発生する移籍金のx%譲渡してもらうという契約。
これは売り手のクラブが将来的なポテンシャルを見越して2次キャピタルゲインを得るために付けることが多い。上記のA→Bに売却する際は比較的安い移籍金で移籍させるのが一般的だ。
2次売り手(B)からすれば当該選手が超高額で売れたとしてもキャピタルゲインが本来より大幅に減ってしまうという点は懸念しないといけない。
フラムからリバプールに移籍したファビオ・カルバーリョも将来的にリバプールから他クラブに移籍した場合にフラムは20%の移籍金を受け取るという転売条項が含まれている。