中国資本からエリオットマネジメントへ
21-22シーズンセリエAのスクデットを獲得したミラン。17-18シーズンまでは中国人オーナーのヨンホン・リー氏がオーナーだった。中国資本に代わった当時はケシエ、チャルハノールを筆頭に7人の大型補強を図り、その額は1億ユーロを超えていた。
また、現在PSG所属のドンナルンマとは、600万ユーロというGKとしては破格の年棒で契約更新に至った。このように無茶な経営をしていたヨンホン・リー氏だが、エリオットマネジメントから借りていた増資を返済できずに2018年7月にオーナーの権限がエリオットに代わった。
エリオットの目的は「クラブの価値を高めて高値で売る」というものだった。また「余分な資金を使わない」コストの削減を経営の軸とした。スカウト部門にはリッキー・マッサーラ氏とACミランのレジェンド、パオロ・マルディーニ氏がCEOのガジディス氏と3人で一貫して、若手を主体としたチームを形成。
しかし初期の頃はそれが嚙み合わなく低迷していたが、イブラヒモビッチ、ケアーといったベテラン、21-22シーズンからはチェルシーからジルーを含めて若手とベテランの融合を促す。結果として特にLSBテオ・エルナンデス、LWGレオン、MFトナーリ、CBカルルの成長に繋がったということもあるだろう。
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— AC Milan (@acmilan) May 22, 2022
徹底した経営戦略-選手との契約更新
そんなクラブが度々抱えなければならない課題が契約更新だった。20-21シーズン終了後にはドンナルンマが600万ユーロから1000万ユーロ、それだけでなくライオラが代理人手数料として1000万ユーロ以上を要求。
また、チャルハノールは250万ユーロから600万ユーロの増俸を要求した。今シーズンスクデットの立役者となったケシエも年俸の面で契約延長の合意に至らず、来シーズンからはバルセロナに移籍する予定となっている。
クラブの生え抜きとして2015年からクラブを支えていたロマニョーリもクラブから減俸を提示されたが合意に至らず、今シーズン限りの退団となっている。
クラブを主力として支えていたこの4選手をフリーで手放すとなると多大な損失に見えるかもしれないが、徹底した経営戦略で未然にコストの膨大化を防いでいる。
また、今シーズンからは上記の4選手のように契約が切れるギリギリではなく、前もって契約更新をすることで、フリー移籍のリスク回避、年俸急上昇の緩和を図っている。
実際にセリエAの今シーズン上位8クラブと比較しても、一番選手給料でコストのかかっているユベントスよりも半分ほどに抑えられていることがわかる。
セリエA上位8クラブのそれぞれのトータル選手給料比較(単位:ユーロ)
1.ユベントス 1億6895万
2.インテル 1億3732万
3.ナポリ 9903万
4.ローマ 9405万
5.ミラン 8152万
6.ラツィオ 6697万
7.フィオレンティーナ 5279万
8.アタランタ 4282万
レッドバードキャピタルへの売却
クラブの赤字を減らし、昨シーズンではチャンピオンズリーグ復帰、今シーズンではスクデットを獲得したクラブは、バーレーンのインベストコープ、アメリカのレッドバードキャピタルという2つの資産運用会社と投資会社の目に留まり、つい最近では後者がクラブの購入に向けて手続きを行っている。評価額は13億ユーロ。
イタリア紙『カルチョ・エ・フィナンツァ』によると、エリオットがこれまでACミランに費やした資金は8億3300万ユーロで、クラブの利益等で相殺すると7億500万ユーロとなっている。買収時から売却時で6億ユーロも価値が上がっていることがわかる。