マンチェスター出身で、幼い時からマンチェスター・ユナイテッドの下部組織に所属し、2016年(19歳)のプロデビュー以降も同クラブ一筋で活躍するイングランド代表FWマーカス・ラッシュフォード。19-20年にはリーグ8位タイとなる17得点を決め、一気にブレイクを果たした。
同シーズンはトップとして活躍したが、サイドでプレーすることも多い。持ち前の圧倒的なスピードでラインを抜け出すだけでなく、サイドから突破することもできる。
今年で25歳と年齢的にもまだまだ伸びしろがあり、さらにもう一段階能力を開花させる可能性も十分にあるだろう。
このようにサッカー界の一流選手であるラッシュフォードだが、実はピッチ外でもさまざまな面で貢献している。
欧州でコロナウイルスが流行し始めた2020年、欧州各国はロックダウンを強いられたが、イギリスも例外ではなかった。各市場の動きが鈍り、各方面で支障が出始める。
そんな中、イギリス政府は貧困家庭に学校の給食を無償で提供していたが、学校の一学期が終わる7月で救済を停止する予定だった。
そこに抗議の意を示したのがラッシュフォード。自身も子ども時代に無料給食にお世話になったという経験談を用いながら、方針の変更を訴えた。
ジョンソン首相とも会談を行い、最終的には夏休み中も子どもたちが無料給食を食べられるようになった。
BBCによると、”ラッシュフォードはロックダウン中、慈善団体「FareShare UK」と協力し、貧困家庭などに対して300万食分の食事を確保するため、2000万ポンド(約26億8000万円)の寄付を集めていた”という。
このように多くの子どもたちに救いの手を差し伸べたラッシュフォード。その行動が称えられ、ラッシュフォードのウォールアートがマンチェスターに描かれることになった。
A new mural in Manchester honors Marcus Rashford and his fight against child poverty 🎨
— B/R Football (@brfootball) November 6, 2020
(via @akse_p19) pic.twitter.com/rmgzFzjtxI
しかし翌年、ある出来事によってこのウォールアートが荒らされることになる。
2021年に行われたユーロ2020、イングランド代表は決勝まで進んだ。あと1試合勝てば同国史上初となる欧州制覇を達成できるという試合は、0-0のままPK戦までもつれ込む。
イングランドはケインとマグワイアが連続でPKを決めた一方で、イタリアは2人目のベロッティが失敗。3人目のボヌッチは冷静に流し込んだものの、イングランド有利であることは変わりない。
そこで3人目に選ばれたのがラッシュフォード。決めれば1点リードをキープという場面だったが、ポストに当てて外してしまう。
その後イタリア4人目のベルナルデスキも冷静に決め、行方は分からなくなった。しかし、イングランド4人目のサンチョのキックがドンナルンマに止められ、一気にイタリア優勢に。
イタリア5人目はPK名手のジョルジーニョ。決めれば勝利というところだったが、ピックフォードがセーブ。イングランド代表に望みをつないだ。
イングランドの5人目はサカ。決めれば継続、外せば負けという手に汗握る場面だったが、結果はドンナルンマがセーブ。イングランド代表の初優勝はなくなった。
問題はこの試合の後だった。ラッシュフォードのウォールアートにPKを外したラッシュフォード、サンチョ、サカを侮辱するような書き込みが相次いだのだ。警察は人種的な動機ではないだろうという見解を示していたが、ウォールアート前での反人種差別運動には多くの人が集まった。
そして住民は、応援メッセージやカードでコラージュを作り、侮辱の言葉などを埋めた。ラッシュフォードはこれに対し、「圧倒された。感謝しています。言葉を失いました。」と感謝のツイートを投稿した。
Marcus Rashford’s mural since Monday ⏩ pic.twitter.com/Mm6dFXB8Xj
— B/R Football (@brfootball) July 13, 2021
このように描かれてから2年も経っていないにも関わらず、多くのドラマをもたらしたラッシュフォードのウォールアート。これはもちろんラッシュフォードの功績あってのもの。
プレー面はもちろんのこと、ピッチ外での行動も注目していきたいところだ。
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