プレミアリーグは、1980年代の英国におけるサッカーの衰退を受け、結成されたもの。その背景には少し前に物議を醸した「スーパーリーグ」のようなストーリーがある。
先週末は世界最大の国内サッカーリーグのプレミアが誕生して30周年を迎えた。プレミアリーグの誕生により、サッカーのプロ化が英国で確立され、長年にわたり、クラブの潜在能力を商業的に活用している。今日では世界で最も視聴率が高く、最も収入の多いサッカーリーグとなったのである。
プレミアリーグの歴史
1980年代、ヘイゼル(ブリュッセル)とヒルズボロ(シェフィールド)のスタジアムで発生した群衆事故により、イギリスのサッカークラブがヨーロッパ大会への出場を禁じられたことが発端だった。その結果、当時のイギリス首相マーガレット・サッチャーは、「テイラー・レポート」と呼ばれる報告書を作成し、国内のスタジアムの警備を強化し、ファンのフーリガンを減少させる役割を担った。
1888年から続くイギリス最高峰のサッカーリーグであるフットボールリーグ1部は、イタリアリーグやスペインリーグなどのライバルに遅れをとり始めていた。そのため、英国の選手たちは安全が確保され、キャリアをしっかりと積める他国のリーグを選択するようになった。
スタジアムに足を運ぶファンの数が減り、クラブの売上高が減少した結果、国内で最も経済力のあるチーム(ビッグ5:リバプール、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド、トッテナム、エヴァートン)が密かに集まり、「サッカーリーグ1部から独立し、独自のリーグを作って、サッカー協会(FA)から独立したテレビやスポンサー契約について交渉できる」という合意をしたのだ。これで、ヘーゼルの悲劇で制裁を受けたことによって出場できなかったヨーロッパの大会の出場に向けて前進できるようになった。
1992年から1993年にかけて、新リーグ「FAプレミアリーグ」を構成する22チームは、クラブの収入を占める割合が最も大きいテレビ放映権の売却交渉に着手することになった。当時、イギリスでの新リーグの放送は、1989年にイギリスでラジオサービスを開始した「スカイ」、1936年設立の国営放送BBC、それまでフットボールリーグなどの放送を押さえていたITVの3局が候補に挙がっていた。
結局、3億400万ポンド(約473億9800万円)という破格の入札で、スカイは最初の5年間、プレミアリーグの試合を独占的に放送する権利を獲得し、BBCは主力番組「Match of the Day」で放送するハイライトを獲得した。一方でITVはこれら2社のライバルに勝てず、イギリスサッカーを手放すことになってしまった。
プレミアリーグは、放映権を売却し、プレミアリーグに所属する22のクラブに平等に分配することで、競争の激化とクラブ格差の縮小を図った。放送第1サイクル終了時に、各クラブは試合収入と商業収入を除き、少なくとも1億2000万ポンド(約187億1000万円)を受け取っていた。
20年間、スカイがイギリスサッカーを独占していたが、2013年にBTスポーツが強引に放送市場に参入したことで、その状況は一変した。これは、大きな予算を備えたテレビ局同士の競争を最大化したいプレミアリーグに有利に働くと同時に、オークションそのものが放映権の価格を上げることになった。
212ヶ国で放映される現在のプレミアリーグ
2022年から2025年までの期間、プレミアリーグの試合を海外で放送することにより、英国プレミアリーグは53億ポンド(約8263億5500万円)、英国の放送局Sky、BT Sport、Amazon Prime Videoは50億ポンド(約7795億8000万円)を得ることになる。このサイクルで初めて国外の放映権が国内の放映権を上回った。
プレミアリーグは、2020-2021会計年度を、2020年に比べて2倍以上となる47万1000ポンド(約7300万円)の利益で閉じた。このように、プレミアリーグは、コロナウィルスがスポーツ業界に大打撃を与えた2019-2020シーズンも19万6000ポンド(3000万円)の利益を維持しており、2シーズン連続黒字で乗り越えた。
20-21シーズン最終節までパンデミックの影響でスタンドに観客が入らないまま大会が進められたにもかかわらず、プレミアリーグの売上高は前シーズン比10.7%増の31億3400万ポンド(約4886億4100万円)となった。