移籍金が例年より少なく、ファンの重要性が強調された年。欧州のビッグクラブは莫大な損失を被った年となった。

コロナウイルスが再び欧州サッカー界を襲った。マンチェスターU、ユベントス、ドルトムント、パリSGなどのビッグクラブは、年俸総額や移籍金などの経費削減に努めたものの、それぞれの年度で1億ユーロ(約130億円)を超える損失を計上した。欧州サッカーは最も困難な局面を迎えているが、問題は、すべてのクラブがそれに備えていたわけではないことだ。

European Club Footballing Landscapeの調査によると、2019-2020年と2020-2021年の会計年度における減収予測は、トップレベルのクラブで72億ユーロ(約9,360億円)、下位のチームでは15億ユーロ(約1,950億円)程度とされている。これは、国内リーグや欧州リーグが昨シーズンの大多数の全試合を無観客で行ったことによる大幅な減収が原因となっている。

クラブの収益性は選手の年俸に左右されるが、その額は過去10年間で急激に増加し、欧州の主要チームの総収入の65%まで達している。

European Club Footballing Landscapeの報告書には、「より強いチームを作り上げるために、一貫して収入以上の支出をすることは、長期的な収益性の問題につながります。同時に、業績不振の場合に引き出せる現金準備金なしに運営することは、クラブの持続可能性を脅かすことになります」と指摘している。

プレミアリーグの場合

マンチェスター・ユナイテッド


英国では、最も資金力のあるマンチェスター・ユナイテッドが、2020年比15%増の売上高で年を越したものの、コロナウイルス以前の年の1,900万ポンド(約28.5億円)の利益に対し、9,200万ポンド(約138億円)の損失と2020年比で4倍に拡大した。

欧州のほとんどのクラブが各スタジアムの閉鎖になったため、2020年3月までの興行収入が9,000万ポンド(約135億円)であるのに対し、マッチデーの収益は2020年の92%減で、わずか700万ポンド(約10.5億円)となっている。

トッテナム・ホットスパー


また、英国のビッグクラブで決算を発表したのはトッテナム・ホットスパーで、2020-2021年の赤字額は18%増の8,000万ポンド(約120億円)となった。

10億ポンド(約1,500億円)の費用がかかった新ホワイト・ハート・レーンの運営に将来を賭けたロンドンのクラブは、2019-2020年に持ち込んだ9,500万ポンド(約142.5億円)の売上高に対し、マッチデーの収益もわずか200万ポンド(約3億円)に削減されることになった。