ジョアン・ラポルタ会長は、2025年末にカンプノウ、2026年にパラウ・ブラウグラナ、2027年に商業施設を完成させるよう、プロジェクトを見直した。


ジョアン・ラポルタ会長の取締役会は、「エスパイ・バルサ」の新しいデザインを仕上げており、現時点では、2014年のソシオ投票で承認された6億ユーロ(約780億円)の費用は完全に足りていない。新しい見通しでは、投資額は最大で15億ユーロ(約1950億円)に達し、35年かけて返済することになっている。ソシオには、この投資は2億ユーロ(約260億円)の臨時収入で返済できると伝えられた。

予算の変化は微々たるものではない。2016年にはカンプノウとパラウ・ブラウグラナの改築によって4000万ユーロ(約52億円)、2019年には1.5億ユーロ(約195億円)に引き上げられ、現在では2億ユーロ(約260億円)の追加費用が必要となっている。このクラブ史上最大の融資オペレーションに向けた資金調達と返済計画の詳細はどうなっているのだろうか?

このオペレーションは、「エスパイ・バルサ」プロジェクトが連携しているゴールドマン・サックスが行なっており、今年すでに5.95億万ユーロ(約774億円)の融資を1.98%の金利で調整している。今回は予定よりも5年長い35年の期間で返済することを約束された。

FCバルセロナのCEOであるフェラン・レベルテル氏は、「新スタジアムからの収入があるまでは支払いを開始しない」と利息のみを支払う5年間の猶予期間を求めることに言及し、さらに、「競争力を維持するために不可欠なプロジェクト」であることを強調した。

レベルテル氏は、カンプノウとパラウ・ブラウグラナのネーミングライツに関連した契約以外にも、スタジアム関連のビジネスによる収益が、この事業の保証になると説明している。

また、フェラン・レベルテル氏が率いる経営陣は事業計画を変更した。当初のアプローチを修正して、より多くの商業エリアを取り入れることにしたのだ。これはすなわち、バルセロナ市議会との再交渉を意味するのだが、実現すれば、カンプノウの再開を2025年末、パラウ・ブラウグラナの再開を2026年末、周辺地域の商業施設の再開を2027年にするという建設スケジュールに影響を与えることになる。

予測通りであれば、2億ユーロ(約260億円)の臨時収益が見込まれ、その3分の1が負債の返済に充てられることになる。「新スタジアムをオープンした他クラブは平均で120%の伸びを予想していますが、我々は67%の伸びを期待しています。現実的な数字です」と語った。

「期待通りに売り上げが伸びなかった場合にビジネスコンサルタントを配置する」というゴールドマン・サックスの権利が、前回の計画から維持されているかどうかは不明。これは、同銀行の要求の1つで、投資家が資金を取り戻せる保証を得るためのものだ。

「エスパイ・バルサ」のネーミングライツを含む新しいスポンサーシップの参入により、4800万ユーロ(約62億円、全体の24%)が投入されると推測される。これは、商業エリアの設立によって得られるであろう金額と同じだ。チケット販売と飲食店の利用者増加により、現在と比べて4400万ユーロ(約57億円、22%アップ)の増加となる。また、イベントの開催やカンプノウ・ミュージアムに関しては、それぞれ3000万ユーロ(約39億円)の増加が予想されている。

この数字を達成するために、レベルテル氏は収益部門最高責任者であるアレックス・バルバニ氏と共に、プロジェクトの一部を見直し、VIP席を確保することになった。「ヨーロッパの都市の中で一番のエンターテインメントとスポーツキャンパスになるだろう」と発言し、15億ユーロ(約1950億円)を上限とする新たな借入枠をソシオに訴えかけた。

変更点は主に9項目で、カンプノウの改築コストは4.2億ユーロ(約546億円)から9億ユーロ(約1170億円)に引き上げられた。パラウ・ブラウグラナは、収容人数が1万人から1.5万人強に増えるため、9000万ユーロ(約117億円)から4.2億ユーロ(約546億円)になる。これに加えて、周辺地域の工事と商業施設の開発のための1億ユーロ(約130億円)、バルセロナ市議会が「エスパイ・バルサ」を認可するために行った6000万ユーロ(約78億円)の投資、そしてエスタディ・ヨハン・クライフにかけられた2000万ユーロ(約26億円)を加えなければならない。

商業的には、大きなリング型のVIP席(ボックス席)と商業エリアが建設される予定だった1階部分を再建しないという修正だ。その代わりに、3階席を改築して、2階席との間にダブルVIP席の設置を提案している。「VIP席の収容可能人数を大幅に増やすことができれば、プロジェクトのために、より多くの収入を得ることができます」と理事会は述べている。

この事業は、2018-2019年シーズンに2220万ユーロ(約29億円)をもたらした。当初の計画では、このVIP席はカンプノウ収容人数の2%から6%になり、総面積20,613平方メートルで約6,300人を収容できる106個のプライベートボックスに拡張されることになっていた。

2017年に設計されたプロジェクトでは、ベンチ後方のプレーヤーゾーンに400席のVIPシートを設置し、88室の個室と2つのスカイボックス(大型ボックス)の追加が想定されており、1階席の総面積は合計で4,194平方メートル追加される予定であった。さらに、VIPボックスとベルリンルームの2つのプライベートエリアの3,533平方メートルと、ローマルームとゴール・ノルドルームに代わる、来賓のための共有スペース4,540平方メートルが含まれていた。

2階席のラテラルエリアには、現在同じ階のゴール裏にあるボックスを引き継いで、18個のボックスが計画されていた。詳細は未定だが、ラポルタ会長の取締役会議は、1階席部分に予定されていた全ボックスをこのラテラルエリアに集中させるための建築変更を望んでいる。

ケータリングサービスに関しては、当初のプロジェクトでは試合日に80以上の施設を想定しており、食事とマーチャンダイジング販売の両方を行う予定だった。さらに、試合日以外にも一般公開される3つのレストランをオープンすることが期待されていた。これは、毎年ミュージアムに訪れる何百万人もの人々に対応するためだ。さらなる発展やパラウ・ブラウグラナのエンターテイメント施設への転換に伴って増加することが見込まれている。

新たな計画書にはミュージアムとオフィシャルストアのアクセス排除が記載されている。両施設の入り口は、正面スタンド(トリブナ)に設置され、オフィシャルストアは2500平方メートル、ミュージアムは3000平方メートルとなる予定。また、ホール・オブ・フェイムやeスポーツのプロモーションのためのエリアも用意される。この2つの要素をなくすことで、バルサはアクティビティエリア、子ども向けのエリア、噴水、ビジターや近隣住民のためのレジャーエリアを備えた、ミーティングスペースを作ることができる。

スタジアムの屋根は、前回のプロジェクトとは異なり、地熱システムを取り入れる。また、3万平方メートルのソーラーパネルを設置し、太陽光発電も行う。また、自転車の利用が促進されるものの、2,200台分の駐車スペースは維持され、その一部は電気自動車用に確保される。

技術面でいうと、未来のカンプノウはスタジアム内に360度スクリーンを設置してファンに新たな体験を提供したり、セキュリティシステムや車両の出入り管理を改善したり、5G接続がもたらす可能性を最大限に活用するなど、市場の最新テクノロジーを取り入れたスタジアムになるだろう。


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