選手への給与支払い削減
レアル・マドリードの持続可能性がバルサよりも高い理由の一つに、近年の賃金管理がある。カルロ・アンチェロッティ監督の現在のチームは、ジネディーヌ・ジダン前監督の最終年のチーム年俸約4億9,500万ユーロ(約654億1400万円)、2019-2020年の5億1,590万ユーロ(約681億7550万円)より低く、2017-2018年と2018-2019年の平均4億6,300万ユーロ(約611億8500万円)をわずかに上回った。一方バルサは、レオ・メッシを引き留めるため、またネイマールの放出をカバーするために、チームのコストが6億ユーロ(約793億円)以上に膨らんでいた。厳しい再交渉の結果、2020-2021年にはこの数字を下回り、2021-2022年には約4億7,000万ユーロ(約621億1000万円)と、一般的な水準に戻ることになる。
下のグラフはレアルとバルサの給料の差を示している。圧倒的にバルサが上回っていることが読み取れる。(単位:100万ユーロ)
ブランドの安定性を追求
バルサは新しいブランドディレクター、セルジ・リカート氏と契約したばかり。彼はナイキで、南ヨーロッパのスポーツパフォーマンスおよびライフスタイル部門のマーケティングディレクターを務めていたが、クラブ経営陣の中で唯一空いていた穴を埋めることになる。今後は、さらに一歩踏み込んで、スポーツとエンターテインメントの融合に向けた取り組みを深めていくことになるだろう。
一方のレアルは、1年前にこの分野のパートナーを更新したが、「レアル・マドリードブランド」に関する新たな挑戦に出た。プロビデンス社の力を借りて、スポンサーからの投資効果を確実に生み出すための戦略だ。2019-2020年には2億6,110万ユーロ(約345億400万円)だったのだが、昨年は、コロナウイルスによりビジネスがストップし、Legends社とのリテールプロジェクトが進まなかった。
2人のリーダーと相反する方向性
経営面でレアルとバルサの間で差が出た要因のひとつに、組織の安定性がある。レアル・マドリードでは、フロレンティーノ・ペレス会長(写真の人物)が2000年からクラブを率いているが、ラモン・カルデロン時代(2006年〜2009年)の短期間を除けば、反対勢力や大きなスキャンダルに見舞われることはなかった。
一方のバルセロナは、この5年間、常に不安定な状態が続いている。ジョセップ・マリア・バルトメウ会長の第2次政権では、ネイマール放出、バルサゲート事件など様々なスキャンダルでバルサがニュースの中心になるなど、物議を醸した。後任を決める選挙は混乱を極め、新理事会は必要な支持者を集めるのに一苦労。結局会長の交代により、急激な経済危機に陥ったクラブが230万ユーロ(約3億400万円)の退職金を支払うことになり物議を醸した。
下のグラフは売上高の推移を示している。コロナウイルスの影響をより大きく受けているのはバルセロナで、レアル・マドリードは比較的安定している。
欧州スーパーリーグ:バルサとレアルが団結
ペレス会長が注目されたニュースといえば、欧州スーパーリーグ構想である。このテーマについては、ペレス会長が様々なメディアに登場し、この新たなコンペティションを擁護することになった。チャンピオンズリーグに対抗する初の欧州スーパーリーグとして、バルサとマドリードが手を取り合っている。
バルトメウ前会長に続き、ペレス会長はラポルタ会長も味方につけることになった。CVCとの契約が成立したことで、バルサの会長は「バルサを危険にさらすことはできない」と考えスーパーリーグ創設を目指す。スーパーリーグは、マドリード、バルサ、ユベントスの手に委ねられ、「問題はフォーマットではなく、経済的なコントロールだ」と主張している。
レアル&バルサの女子チーム
女子サッカーは、バルサにとって数少ないアドバンテージとなっている。バルサの女子チームはヨーロッパで最高のチームだが、一方、マドリーはチャンピオンズリーグに出場しているものの、降格の危機に迫られている。バルサは今シーズン、放映権料などで750万ユーロ(約9億9100万円)を手にすることになるが、一方、マドリーがどれほどの予算を使っているかは不明だ。両クラブにとって、女子サッカーのプロ化は、他のチームとの差別化ともなり得ることは間違いない。
サッカー以外のスポーツ分野
最後に、両クラブのサッカー以外のスポーツに関して。両クラブともにバスケットボール部門があるのだが、毎年例外なく、スペインのバスケットボールリーグ「エンデサ・リーグ」のタイトルをかけて戦っている。他のチームでは考えられないような損失を出すことができるのも、彼らによる寡占が理由のひとつだ。実際、マドリーとバルサはエンデサ・リーグのクラブ損失の75%を占めており、2019-2020年の最新の数字によると、総収入の18%しか占めていないにもかかわらず、合計で5500万ユーロ(約72億6800万円)の赤字を出している。
ハンドボール、フットサル、ホッケーのプロチームを持つバルサの場合、2021-2022年のサッカー以外のスポーツ分野での損失を4300万ユーロ(約56億8240万円)に抑えるという。バスケットボール、ハンドボール、ローラーホッケー、フットサルなどの部門の事業は、過去最高の1,850万ユーロ(約24億4500万円)の収入となり、また、赤字は200万ユーロ(約2億6400万円)近く削減される。