パンデミック以前のラ・リーガでは、レアル・マドリードとFCバルセロナが売上高の40%近くを占めていた。しかしパンデミック以降、欧州スーパリーグ創設、コロナ危機、スタジアム改修構想といった問題が、スペインのライバルクラブ同士を一つにする。


レアル・マドリードとバルセロナはスペインサッカー界を牽引する大きな存在であり、エル・クラシコは全世界で盛り上がりを見せる。10/24にカンプノウで行われたエル・クラシコではレアル・マドリードが2-1でバルセロナを下した。パンデミック発生以前には、ラ・リーガの世界売上高の約40%を占めていたが、現在両者は以前のように圧倒的な支配力を維持できていない。従来のクラブモデルを維持しながら同じ舞台で戦うことの難しさが明らかになってきている中で最大規模の株式投資を行なっていたのだが、その最中にパンデミックに見舞われることになった。

両クラブは、プレー面でも、そして何よりも経済的な面でも大きく状況が異なる。現在ラ・リーガ2位のレアル・マドリードは、コロナ禍での2シーズンを120万ユーロ(約1億5800万円)の純利益で締めくくることができたが、一方のFCバルセロナは2019-2020シーズンと2020-2021シーズンを合わせて5億8,260万ユーロ(約767億9900万円)の経済的穴埋めをしており、その差は歴然だ。このうち約2億6,300万ユーロ(約346億6900万円)は、ジョアン・ラポルタ氏(下の写真の人物)による取締役会が、前任のジョセップ・マリア・バルトメウ氏と共同で行った選手の減価償却費と訴訟の引当金に相当するものである。

バルサとマドリーは、スーパーリーグの推進、女子プロサッカーリーグの規模拡大、ラ・リーガの一部プロジェクトからの撤退など方向性が一致している部分がある。特にCVCとラ・リーガの投資計画は、ラ・リーガに所属するクラブ全体のレベルアップを目的としており、総収入の50%以上を占めていた両クラブの事業の比重が37.4%にまで下がることになるため、両クラブにとってそこまで利益がない。しかし、ラ・リーガとしては全クラブが平等であればあるほどリーグの競争力が高まるため、この契約に前向きだったのだ。

放映面では、LaLiga、Mediapro、Movistar+の3社が、30台以上のカメラ、各チームのマルチカメラ、ナレーション、人気ストリーマーのイバイ・ラノス氏によるマッチプレビューなど、「これまでにない」放送を行う。「83の国際放送局と500人以上の公認ジャーナリストのおかげで、エル・クラシコは全世界に届けられるでしょう」と、運営は語っている。 



メインスポンサーに関して

まだ手がつけられていないのは、リーグ戦で発生する収入割合の問題だ。実際、レアル・マドリードとバルセロナはリーグの収入の約75%を占めている。しかし、バルサはパンデミック前に3億6330万ユーロ(約478億9000万円)だったものが2020-2021シーズンには2億7030万ユーロ(約356億3100万円)になるなど、大きな打撃を受けているのも事実。一方マドリーは、2019-2020シーズン、メディア企業「プロビデンス社」との契約を延長してスポンサービジネスを開拓することで、2億9,500万ユーロ(約388億8700万円)から3億1,200万ユーロ(約411億2800万円)への収入アップに成功している。

しかし現在、両者は2022-2023シーズンのメインスポンサーとの契約を結ぶため、時間との戦いを余儀なくされている。バルサは、楽天との契約が5500万ユーロ(約73億600万円)から3000万ユーロ(約39億8500万円)へと40%カットされたため、以前の価値を取り戻すことができるブランドを市場で探している。しかし一筋縄ではいかない。なぜなら、数年前とは異なり、現在のバルサには「メッシ」「ネイマール」「3冠達成」などマーケティングに繋がる魅力がないからだ。ユニフォームの左袖スポンサーであり、スポンサー料を1,800万ユーロ(約23億9100万円)から1,000万ユーロ(約13億2800万円)に下げて今シーズンの契約を延長したBeko社との契約も終わりを迎える。

一方のマドリーは、エミレーツ航空との契約を終了させるか、もしくは年額7,000万ユーロ(約92億9800万円)の契約に代わるものを探さなければならない。この契約はユニフォームやトレーニングウェアにロゴが入るだけでなく、他社がユニフォームの袖の広告も認めていない。両者がビジネスとして考えているもう一つの資産は、スタジアムのネーミングライツで、その評価額は1シーズンあたり2,000万ユーロ(約26億5700万円)程度と言われている。



スタジアムの改修構想

また、レアル・マドリードが先行している分野は、施設の最新化だ。両者はほぼ同時にプロジェクトを発表したが、レアルが先に行政と合意し、仕事に着手した。一方バルサは、バルセロナ市議会の要求により、6,000万ユーロ(約79億7000万円)以上の投資を使って改修に着手するまで約1年を要した。

その後、パンデミックが発生したが、実はレアル・マドリードはこの状況を利用してサンティアゴ・ベルナベウの改修工事を加速させ、さらにはイベント開催の自由度を高めるために、稼働式の芝を採用するなどの施策を講じた(野球とサッカーができる札幌ドームのようなもの)。予定では2022-2023シーズンに再着工し、総費用は最終的に1億5,000万ユーロ(約199億2500万円)増の7億2,500万ユーロ(約963億350万円)になる見込み。

準備が整えば、追加収入は約1億5000万ユーロ(約199億2500万円)になるとレアルのペレス会長は考えているのだが、バルサのラポルタ会長は追加収入を2億ユーロ(約265億円)に引き上げている。しかし、ラポルタ会長が行なった新スタジアム構想「エスパイ・バルサ」の変更と実際のコストの再試算により、15億ユーロ(約1992億円)まで必要となった。この資金調達は、取締役会のメンバーの投票にかけられることになる予定。その後、レファレンダムが行われ、2025年に予定されているこけら落としがさらに遅れる可能性がある。

以下のグラフはレアルとバルサの近年の収支状況を示している。レアルは安定しているが、バルサはコロナウイルスの影響で急激に下落していることが見て取れる。(単位は100万ユーロ)



借金と期限

多くのバルセロナの会員が恐れているのは、この追加負債がクラブのレベルを低下させることだ。エスパイバルサに関連する1億2200万ユーロ(約162億550万円)を除くと、2020-2021シーズンでは5億5800万ユーロ(約741億2050万円)の純負債を抱えている。クラブは、カンプノウとパラウ・ブラウグラナ(屋内競技場)の運営に関して、35年間で生み出される収入で賄われるように設計されていると強調。さらに、数週間前には、ゴールドマン・サックス社から5億7500万ユーロ(約763億7900万円)の借り換えを行っており、本来1年半以内に返済期限を迎える支払い期限を10年で返済することになった。

バルサとレアルの状況は全く異なる。レアルはスタジアム改修に着工する前シーズンに、キャッシュポジション(現金持高)を上げるために利益を増やし、より少ない負担で到着することを選択した。クラブは2020-2021シーズン、4600万ユーロ(約60億7900万円)の純負債を抱えて決済を終えたが、これにはスタジアムの改修にすでに投資された2億7920万ユーロ(約368億9600万円)が含まれる。

こちらの記事は2部構成となっています。パート2は以下よりご覧ください。

「低迷する2クラブ:増え続ける負債とサラリーキャップによる移籍市場停滞〜Part2〜」はこちらから


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