スポーツ界で流行り始めたのは、NBAと連動した「TopShot」のExclusive Moments(※1)がわずか1週間で1億5千万ドル(約166億9400万円)に達した時だった。それ以来、他のリーグやクラブがこの手の企業と契約する数は急増しており、実際この業界は、その後スポーツ界で最も契約を勝ち取っている分野の一つである。
(※1)NBAで選ばれたスーパープレー
ポルトガルのプラットフォーム「Real Fevr」のCEOフレッド・アントゥネス氏は、ワールド・フットボール・サミット(WFS)にて、「私たちはまだ全員がアーリーアダプターです。スポーツだけでなく、他の業界でも暗号通貨以外のブロックチェーン技術を用いた体系を構築しています」と述べた。
NFTは、Socios社やBitci社といった企業の代替性トークンと共存する。カードゲームを通じてコレクションを楽しむ人やゲーミフィケーションにこだわる人がいる一方で、代替性トークンをコインに変えて実際の体験や公式グッズと交換する人もいる。ただしどちらにも共通しているのは、所有者がデジタル資産(代替性トークンやNFT)を持ち、それを収集・交換したり、投機の目的で使用することができるという点だ。
この市場はまだあまり規制されておらず、ユーザーの興味や需要によって価値が上がったり下がったりする。ブロックチェーン技術を専門とする法律事務所ATH21の設立パートナーであるカラスコサ氏は、「暗号資産の世界では、誰でも投機することができます。この市場はまだ初期段階であり、投機の余地は十分にあります」と語った。
NBAのダラス・マーベリックスのオーナーであるマーク・キューバン氏は、金の価値と比較して次のように述べている。「金は買い手がいるから価値があるのであって、何か特別なものがあるという訳ではありません」。
投資会社Galdana Ventures社のマネージングパートナーであり、元FCバルセロナのデジタル部門責任者、Barcelona Techの副社長でもあるイ・ディダク氏にとって、NFTと暗号はデジタルファンのマネタイズのためにうってつけのものだが、収集用のトークンであるだけでは不十分だと考える。「現実世界やバーチャル世界で『特別なデジタル体験にアクセスできる』という付加価値が必要」だ。例として、ビデオゲームをアップグレードできるNFTや、スマートコントラクトで価値を生み出すことができるNFTを挙げている。
メタバースはどのように構築されマネタイズされるのか
コロナウイルスの影響により、スポーツ界へ進出するか否かの瀬戸際にいたビジネスを一気に取り寄せることができた。代替性トークンを扱う企業は、スポンサー収入減少により新たな可能性を模索していたスポーツ界に入り込むことに成功し、産業を開拓した。また、ラ・リーガではブックメーカーとの契約を禁止されたこともあり、同リーグの多くが新たなビジネスパートナーを求めて市場に出た。
クラブは、ビジネスの一部を代替性トークン発行に頼ることで、スポンサー収入の固定額を諦めてきた。しかし、次のステップは、NFTや新たな技術を使った独自のデジタル・エコシステムを作成し、マネタイズを進めることだ。カタルーニャ大学のガルシア・フォント氏は、「今のところ、コレクターズアイテムがこのビジネスへの第二の入り口になると思われます。しかしここで留まらず、ブロックチェーン技術を使用できるアプリケーションをさらに開発し、より先に進む必要があります」と語る。
クリスティーナ・カラスコサ氏は、現在、それぞれのスポーツ団体が独自のメタバースを作り上げることは意味がないとした上で、「メタバースを一から構築・開発するのではなく、すでに存在し人気のあるメタバースを利用することによって、その中に商業戦略やビジネス戦略を補完するデジタルスペースを作ることができます」と述べている。
このメタバースが独自の存在感を持つようになると、規制がより厳しくなるだろう。すでに一部のプラットフォームでは、代替性トークンやNFTの過去の価格変動を見ることができなくなっており、株式市場のように確認することができない。デジタル資産は、将来的に家や車、あるいは選手などの「物理的に存在する資産」と同じように扱われる時代が来るのだろうか?