ラ・リーガでは、選手の給料を抑えるという方針により、移籍市場は閉鎖間際までほぼ動きがなかった。一方でプレミアリーグは移籍市場全体の45.1%を占め、欧州の中で最も動きのあるリーグとなり、5大リーグではブンデスリーガのみ収入が支出を上回った。
最終日までこれほど移籍市場の動きが停滞していたのは初めてではないだろうか。例年では考えられないほどの市場停滞が続いていたが、結局最終日に慌ただしく動くこととなった。パリ・サンジェルマンと共に市場を大きく動かしたプレミアリーグを除き、各クラブは選手登録枠の確保を急かされた。ただ、最終的に大きく動いたように見えた今夏の移籍市場では、合計約30億ユーロ(約4000億円)の支出に留まり、2020年夏と比較しても16%減に収まっている。
以前のように収入を得られない中で、チームのコストを削減する必要があることから、5大リーグでは買取オプション付きのレンタル移籍や選手放出、もしくは現在所属している選手の契約更新が主流となっている。スタジアム入場制限の解除、マーケティング予算の調整、サッカーミュージアムなどによるビジネスの再活性化も急務である。
市場の動きを見ていると、大株主や州の支援を直接受けているクラブは、ほぼパンデミック前の水準で運営している。また、それらのクラブが籍を置く国の経済状況はラ・リーガに比べてはるかに良い。5大リーグのクラブ間では、2019-2020シーズンに22億ユーロ(約2900億円)以上の損失を出しており、2020-2021シーズンはより状況が悪化するだろう。
このような状況に直面しているにも関わらず、減給を受け入れるサッカー選手が数少ないことから、各クラブは選手を放出することに焦点を当ててきた。特にラ・リーガでは、70%以上のチームが支出限度額を超えていた。将来のことを考えると3億ユーロ(約400億円)以上の確保が必要だったバルセロナは、メッシの残留を諦めることになる。4人のキャプテン(ジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケツ、セルジ・ロベルト、ジョルディ・アルバ)が21-22シーズンの給与25%カットを受け入れた上でメッシの残留を熱望したものの、功を奏すことはなかった。
今夏の移籍の多くは、1年または2年で確実に節約する方が良いという考えの元で動かされた。例えばユベントスは、クリスティアーノ・ロナウドの退団で1500万ユーロ(約19億5800万円)の損失を出したが、給料のことを考慮すると合計4000万ユーロ(約52億2300万円)以上を節約していることになる。
放出でその選手の給料分を浮かすか、それとも契約延長で給料を再交渉するか。2021年よりも2025年の方が正常な状態に戻っていると考え、選手の給料を再調整する必要があった。ただし、パリ・サンジェルマンは例外で、「今シーズンこそチャンピオンズリーグで優勝する」という強い意志が伝わってきた。
「私たちは、欧州スーパーリーグがヨーロッパサッカーを壊滅させるとして批判していましたが、今回のPSGに対しても同様に批判しています。コロナウイルスによる損失は3億ユーロ(約391億円)以上、フランス国内のテレビ収入は40%減。一方でPSGの給料は合計5億ユーロ(約652億円)以上?あり得ない」。こう話すのはラ・リーガ会長のハビエル・テバス氏だ。ラ・リーガでは今シーズンCVCが参入したことで、すべてのクラブがよりチームを強化しやすくなった。もちろん、選手・クラブ間の交渉をスピードアップすることが目的だ。
レアル・マドリードは、キリアン・ムバッペの獲得に最大2億ユーロ(約261億円)を提示していたが最終的に願いは叶わなかった。パリ・サンジェルマン以外のクラブなら、ムバッペが来年1月にはフリーになることを考慮して放出していただろう。より多くの移籍金が確保できるからだ。パンデミック発生以来、この手の契約交渉は多くのサッカー選手が使ってきた。移籍の際にボーナスが発生すれば、減給を食らわずに移籍できることを知っていたのだ。この方法でアラバはレアル・マドリードへ、メンフィス・デパイやエリック・ガルシアはバルセロナへの移籍が決まった。
それはそうと、プレミアリーグの動きを見ると、遅かれ早かれ大金が動く状態に戻るだろう。プレミアリーグのクラブは今夏、13億5290万ユーロ(約1766億3900万円)を投じたが、これは2020年の移籍市場と比べてもわずか5.3%の減少で、8000万ユーロ(約104億4500万円)以上の大型移籍もあった。ブンデスリーガは選手への投資額が14.5%増の4億1670万ユーロ(約544億570万円)となり、ついにラ・リーガを追い抜いた。
Transfermarkt社がまとめたデータによると、株主の経済力が最も弱いラ・リーガは、今夏の支出額が前年比30.3%減の2億9300万ユーロ(約382億5500万円)となり、5大リーグの中で最下位だ。
実はラ・リーガは、2020年時点で既に勢力が弱まっており、支出額はリーグ1の3億8440万ユーロ(約501億8850万円、18.3%減)、セリエAの5億4970万ユーロ(約717億7060万円、38%減)よりも下回っていた。しかし、純投資額では、プレミアリーグの7億900万ユーロ(約925億7000万円)のマイナスに対し、リーガは6300万ユーロ(約82億2500万円)のマイナスで2位となっている。5大リーグの中で収入が支出を上回ったのはブンデスリーガのみで、3760万ユーロ(約49億900万円)だった。