マッチデーによる収入は徐々に戻ってきているが、コロナウイルスによる制限で急激に減少しており、また会員を取り戻さなければならないという課題も残る。各自治州では、入場者数の上限を40%までと決められており、シーズンチケットだけで3億円の赤字となっている。


現在、ラ・リーガの新シーズンが始まる今週末に何人がスタジアムに入場できるのかは確定していない。コロナの第5波がまだ発生しているため、入場可能数があやふやになっている。ただ確実に100%席が埋まることはないだろう。今のところ、政府と自治州との間で、入場者数が満席の40%を超えないという最低限の合意がなされている。実はラ・リーガは70%を目指していた。

チケット販売やその他のマッチデー収入以外に、ラ・リーガのクラブにはシーズンチケットだけで3億ユーロの売り上げ?があるという。プレミアリーグやリーグ1では100%の収容率を期待できる。

つい数週間前まで、2021-2022シーズンのシーズンチケット販売キャンペーンを急いでいたクラブも少なからずある。まず、過去2シーズンのシーズンチケット保有者、特にファンがスタンドに入れないままシーズンが終了してしまった2020-2021にシーズンチケットを保有していたファンに、払い戻しと埋め合わせを行なった。サッカーを見に行けないにも関わらず、シーズンチケットを買う。これに経済危機が加わると、サッカーファンがスタジアムに行くかどうかを決める際の判断に影響が出てくる。

新シーズンの目的は、新規のシーズンチケット保持者を増やすことではなく、スペインのビッグクラブがパンデミック前に保有していた92万人ほどのシーズンチケット保持者を維持することだ。そもそもこれらのコアなファンが初日から席につけるかどうかもわからない。

クラブ会員とマッチデイ収入の問題は、地域によって、またカテゴリーによっても異なる。2部リーグよりも1部リーグの方が、よりお買い得なシーズンチケットを持っているため、落ち込みが顕著になると予想される。実際、バルセロナとレアル・マドリードを除いて、最初の制限によっては、パンデミック前の観客動員数を維持できるチームもある。

政府は、ファン入場率の上限を自治州の手に委ねた。これにより、パンデミック前の時代に比べて、不平等な占有率の競争が繰り広げられることになる。マドリードは、今シーズンの一般の観客入場に向けて、より柔軟な対応をしようとしている地域だ。マドリード当局は、入場者上限数の60%までを許可しており、これはカタルーニャ州政府の3倍に相当する。つまり、サンティアゴ・ベルナベウやワンダ・メトロポリターノには、カンプ・ノウの2倍のファンを集めることができるということになる。ジョアン・ガンペール杯の開催を最初から否定されていたカンプ・ノウには2万人しか集まらなかった。もちろんマドリードでは4万人以上の観客を収容することができた。最終的には、リーグ戦の初日に最大3万人のファンがカンプ・ノウに入場できるようになる。

収容人数以上にクラブにとって大きな課題となるのは、会員、シーズンチケットホルダー、試合を観戦する全ての人たちを満足させることができるかどうかだ。抽選を行なうことは、限られた収容人数の中で観戦者を選ぶための主な選択肢となる。しかし、シーズンチケットを持っている人があまり気に入らないような試合だった場合はどうするのか。観光客などにチケットを売ることができないことによって失われた収入をどうやって回収するのか。

スペイン1部リーグでの平均入場率は73%

コロナウイルスにより生活が完全に変わってしまった時、クラブの数字はとても落ち着いており、平均入場率は、1部リーグでは73.1%、2部リーグでは55.3%だった。スペインリーグでは、観客動員数が5年連続で上昇し、2019-2020シーズンは初めて1500万人の観客動員数を突破する勢いだった。

セビージャFC、アトレティコ・マドリード、レアル・マドリード、そしてその後降格したCDレガネスなどのクラブは、チケットの平均入場率が80%を超えていた。今、セビージャのホームスタジアムでは、入場者数が満席の25%以下になる可能性があります。

クラブビジネスにおけるこの大きなハンディキャップを克服するためには、「デジタルツールがすでに重要になってきています」と、3D Digital Venueの共同設立者であり、この分野を専門とするスペインのスタートアップ企業の事業開発ディレクター、フランシス・カサド氏は説明する。さらに「スタジアムに急速に回復しているファンには、シミュレーションや経済予測機能を備えた最先端のツールが必要になります」と強調した。

各チームにとって一番大きな目的は、コロナによる無観客試合によって失われた収入を取り戻すことだ。シーズンチケットの更新には、すでにテクノロジーが導入されている。それは「ワンクリックで更新」で誰でも簡単に行うことができる。クラブはプラットフォームやテクノロジーに何千ユーロもの投資をした。2020年の3月(コロナが蔓延する前)まで、ほとんどのクラブがあまり気にしていなかったものだ。

「クラブは、スポンサーシップや新たな収入を得るために、デジタル面のサポートが必要になります。収益源を多様化することは、これまで以上に重要になるでしょう。」とスペインの複数のサッカーチームと提携している企業の共同設立者兼CEOであるMichele Marino氏は述べている。

プロサッカー業界に適応した技術を持つ専門家の中には、すでにクラブで導入可能なイノベーションを提案している人もいる。IDSports社のCEOであるJoaquín Costa氏は、インタラクションを重視し、その場で試合を見るためのセカンドスクリーンを提供することに賛成している。例えば「その試合でゴールした選手やデビューした選手のユニフォームをハーフタイムに販売するコーナーを設ける」などだ。つまり、その場にふさわしい視聴者の需要を瞬時に生み出すこと。これは、アメリカなどの市場ではすでに実施されている。

「プレミアム」の提供で新たな顧客層を獲得

「クラブに新たな収益をもたらすためには、プレミアムな提供が非常に重要になります。しかしこのような販売方法は、新たなデジタル販売方法と関連していなければなりません」と前出のMarino氏は付け加える。「テクノロジーによって消費を生み出す」というCosta氏の説明に沿った考えだ。

Marino氏が指摘するように、「今回のパンデミックで学んだことは、スポーツ会場の管理者にはデジタルによるキャパシティ管理とビジュアライゼーションのツールが必要になる」。24時間体制でオンデマンドで提供されるデジタルスタジアムの増加。コロナ後のチケット販売方法となるだろう。