インテル・ミラノは、中国の重要なスポンサーを失ったため、エリアの再編成を決定した。3月までのスポンサーシップビジネスが前年比30%増の7,000万ユーロ(約90億円)となり、ピレリ社の代わりが見つかったにもかかわらずこのような事態に陥っている。


インテル・ミラノの商業部門における重要人物が退く。2019-2020シーズンに就任した商業部門の責任者、ハイメ・コラス氏が退任したことが、2Playbookの取材でわかった。彼の退任によってセリエAの王者は、経済面や新たな投資パートナー、蘇寧電器が経営権を握った際に中国からもたらされた非現実的な契約に代わる商業的なパートナーなどのバランスが取れておらず、複雑な時期にいる。

スペイン出身のハイメ・コラス氏は、2年前の夏レアル・マドリードからインテルに移り、1年半スポンサーシップの責任者を務めた。プロビデンス社がレアル・マドリードのビジネスに参入し、エリアの大幅な再編が行われたことにより、ハイメ・コラス氏がマドリードを去ることになった。また、前年の夏にアメリカへ帰国するためにクラブを離れたデビッド・ホプキンソンを筆頭に、多くの外国人プロフェッショナルが加入した。

イタリアにおいてコラス氏は、スポンサーシップ、チケッティング、ホスピタリティ、マーチャンダイジング、ライセンシングなどの商業ビジネス全体を担当し、コーポレートジェネラルマネージャーのアレッサンドロ・アントネロ氏の直属として、組織を前進させた。

2019年に彼がインテルに加わったのは、クラブがスポンサービジネスの管理を取り戻すという強い意志の元だった。この仕事は数年間、スポーツマーケティング会社であるインフロント社に委ねられていたが、同社は手数料と引き換えに最低限の収入を保証していた。この方式は中小規模のチームには普及しているが、ビッグクラブでは普及していない。

コラス氏が就任した夏は、商業収入が過去最高となり、蘇寧電器が主要株主となった最初のシーズンである2016-2017と比べて32%増の1億4500万ユーロ(約188億円)に達した。しかし、この数字は間違いなく恣意的なもので、蘇寧電器の参入には、数字を正当化することが困難なアジアの巨大企業からのスポンサーシップが伴っていた。


インテル・ミラノ:正当化が困難なスポンサーシップにより、中国からの収入年間4500万ユーロ(約58億円)損失

この地域におけるパートナーのうちの2社(教育会社のFull Share Holdingと旅行会社のLvmama.com)がコラス氏就任の数ヶ月前に関係を解消することが発表された。その後、同部門の2019-2020シーズンの売上高はすでに前年比43%減となっている。これらの企業はそれぞれ、ブランドに年間1,000万ユーロ(約13億円)を支払っていた。

スポーツマーケティング会社であるBeijing Yixinshijie社は、中国における特定のスポンサーカテゴリーの独占的なマーケティングと引き換えに、さらに年間2,500万ユーロ(約34億円)を支払っていたが、この提携を解消する決定を下した。つまり、1年間で4500万ユー(約58億円)が失われたことになる。当面は、最低でもさらに2,500万ユーロ(約34億円)を支払う北京の広告代理店Imedia Advertising社との契約が残り、契約期間は2023-2024シーズンまでとなっている。

インテルの主要なスポンサーが支払った金額を見ると、これらの契約を正当化することがいかに難しいかが分かる。当時合意した条件が変更されていなければ、蘇寧電器はミラノ市に社名を渡し、トレーニングウェアにブランド名を表示するために、年間1650万ユーロ(約21億円)を支払う。2024年までの契約を持つナイキは、チームがチャンピオンズリーグに出場した場合は約1,000万ユーロ(約13億円)、イタリア国内のみの出場の場合は約500万(約7億円)ユーロを支払う。

この金額は、2020-2021シーズンに四半世紀にわたってユニフォームの前面を飾り、メインスポンサーとしての契約を終了したピレリよりもさらに高い。契約ごとの個別データが残っている最後のシーズンである2018-2019、ピレリは固定で1050万ユーロ(約13億円)、チャンピオンズリーグ出場権で220万ユーロ(約3億円)のボーナスを支払った。

インテルは、数多くのスポンサー契約を獲得しているトークン・プラットフォーム「Socios.com」の参入により、何とか安定させることができた。この契約により、2021-2022シーズンでは、インテルの通貨発行の手数料を含むすべてのコンセプトの間で、2,000万ユーロ(約26億円)がもたらされることになる。

2020-2021シーズンの締めがどうなるかはまだわからないが、1~9月のデータではスポンサーシップビジネスが前年同期比29%増となっている。ナイキとピレリの貢献により、7月から3月の間に、2019-2020シーズンの同時期と比べて59.5%増の2950万ユーロ(約38億円)となった。グローバル市場または欧州市場の契約は30%増の1,390万ユーロ(約18億円)、一方地元のパートナーは約2,600万ユーロ(約33億円)と安定している。


クラブは、バランスシート再調整のため2億7500万ユーロ(約357億円)を融資するオークツリー社と合意

クラブは、トップチームのユニフォームの背番号の下にロゴをつけているLenovo、Visa、Locauto、Trenitaliaなどのパートナーを迎え入れることで、中国での提携関係の再編を補ってきた。その他の重要なパートナーとしては、Volvo、Acronis、EA Sportsなどがある。

タイトルを獲得したにもかかわらず、インテル・ミラノでは収益性が上手くいっていないのが実情だ。クラブは2020-2021シーズンの上半期を6,270万ユーロ(約81億円)の損失で締め括ったが、これは2019-2020シーズンの同時期に残した3,270万ユーロ(約42億円)と比べて約2倍となる。そのシーズンは、すでに1億240万ユーロ(約133億円)の記録的な損失を計上している。

蘇寧電器が68.55%の株式を取得して以来、合計で2億5450万ユーロ(約330億円)の赤字となっている。31.05%は投資ファンド「ライオンロック・キャピタル」が所持している。

蘇寧電器は、銀行のバランスシートを整理するために新たな資本を導入する必要があることから、数ヶ月にわたって新たなパートナーの参入を交渉してきた。5月末、オークツリー社との間で、同社が2億7,500万ユーロ(約357億円)を融資し、ライオンロック社が保有する株式を買い戻して、2019-2020シーズンの締めで4億900万ユーロ(約531億円)に上る負債を削減することで合意した。