アレス社は1億2000万ユーロ(約158億6400万円)を投資し、ヒル・マリン氏とセレソ氏のホールディングスの33.9%をコントロールしている。アレス社は2270億ドル(約25兆1331億円)の資産を管理しているアメリカの会社。クラブの65.98%を統括する会社(ヒル・マリン氏とセレソ氏の会社)を通じて、2人のリーダーが支配権を維持することを可能にする。2020-2021シーズンの損失は約8000万ユーロ(約10億5700万円)だった。


アトレティコ・マドリードは経済面の将来が保証されている。クラブは約1億8187万ユーロ(約240億4400万円)での増資の開始を承認し、そのうち約1億2000万ユーロ(約158億6400万円)をすでに確保した。これは、ヒル・マリン氏とエンリケ・セレソ氏が設立した投資ビークル(媒体)に、アメリカ企業が参入したことにより実現したものである。その企業とはアレスマネジメントだ。

この戦略は単純ではないが、2人のリーダーがさらなる資源を負担することなく、現在のガバナンスを維持することができる。ヒル・マリン氏とセレソ氏はそれぞれ2019-2020シーズン終了時に46.68%と15.21%、合計61.89%の債権を支配していたが、最終的にアトレティコ・ホールディングスのパッケージを65.98%に引き上げる債権を追加することが出来た。

増資の際、支配権を弱めないために、ヒル・マリン氏とセレソ氏はアレス社が拠出する1億2000万ユーロ(約158億6400万円)を必要とした。その代わり、他の株主の動向にもよるが、アレス社は33.96%の株式を取得するため、スペイン1部リーグの覇者に対する間接的な株式を20%〜25%維持することになる。

特に、32%のパッケージを維持するために5800万ユーロ(約76億6800万円)を拠出するであろう、イスラエル人のイドン・オフェル氏のファンド「Quantum Pacific Group 」の今後の動向が気になる所だ。ただまだ何をするのかは発表されていない。

実際、ヒル・マリン氏が株主総会において、アトレティコ・ホールディングスが増資分をカバーすることが確実であることに言及しただけで、他の重要な提携者については言及されなかった。CEOであり最大の株主にとっては、アレス社の参入は資源の提供という点だけではなく、「多くの経済分野で世界的に知られており、クラブのプロジェクトを大きく強化する新たな戦略的投資家」と考えている。



アトレティコ・マドリードにとって大規模なもの

投資家を探すことは、企業にとって必要不可欠だった。「パンデミックがもたらした昨シーズンの経済面への悪影響を軽減するために」新たな資産を必要としていた。「また、新スタジアムへの投資や、高い競争力を維持するための選手獲得に伴う負債を軽減するため」でもあった。

さらにチームの成長を再び評価することができた。増資の度に評価額を実質100%引き上げている。ワンダは2015年に2億2500万ユーロ(約297億4600万円)の評価額で参入し、2017年には3億3300万ユーロ(約440億2500万円)まで上昇した。今回の増資により、アトレティコの最高価値は9億8000万ユーロ(約1295億6200万円)以上となった。

アトレティコの目標は、この6年間で3つ目となる新規事業を、法律で定められた期間中に終了させることだ。しかし所有者のいない債権を引き受けたいという投資家が現れれば、第二段階に延長することも可能だ。いずれにせよ、今回の発表と資金の確約により、バルサよりも上になる可能性もある。

すでに確保されている1億2000万ユーロ(約158億6400万円)は、2020-2021シーズンの約8000万ユーロ(約105億7600万円)の損失をカバーし、なおかつ負債を減らすための追加資源となる。昨年の最終的な決算はまだ公表されていないが、シーズンはじめに承認された予算に基づいておよその目安が立てられる。

クラブは損失を回避するために、トーマス・パーティの売却とモラタのレンタル移籍ですでに確保していた6000万ユーロ(約79億3200万円)に加え、6700万ユーロ(約88億5800万円)をさらに抽出する必要があった。会員・購読者による売り上げが1570万ユーロ(約20億4200万円)になれば良いと見込んでいたが、13%の賃金カットを実行する必要もあった。さらに、リーグ戦の優勝でボーナスの支払い義務が発生したという問題もある。

アトレティコは2019-2020シーズンを178万ユーロ(約2億3500万円)の赤字で締めくくったが、これはメキシコやカナダのフランチャイズの赤字が原因だ。この国際的なプランがなければ、コロナの影響下でも利益は1110万ユーロ(約14億6700万円)となっていた。

近年の負担の中で今回の取引が和らげることになるのは財政面で、2019-2020シーズンにかけて3379万ユーロ(約44億6700万円)までに高騰した。その理由は純負債が16%増加し、5億9000万ユーロ(約780億200万円)に達したことに他ならない。今後数週間のうちに、この取引の締めに応じて10%程度削減することができ、何よりも短期的なキャッシュフローの問題を回避することができるだろう。

銀行との契約は、2018年末にメキシコの銀行Inbursaと合意した2億ユーロ(約264億4100万円)のリファイナンスを受けて、2%減の2億1846万ユーロ(約288億8100万円)となった。この契約では、年間約2500万ユーロ(約33億510万円)の返済が行われ、債務不履行の場合はワンダ・メトロポリターノが保証することになっていた。その他の金融負債は、28%増の2億177万ユーロ(約266億7500万円)となり、他クラブとの契約は2倍の3億1575万ユーロ(約417億4400万円)となった。



アレスマネジメントとは何者なのか?

アトレティコが行う最大の増資に足を踏み入れている。アレスマネジメント社は、自社のファンドで2270億ドル(約25兆1331億円)以上の資産を運用しているが、アトレティコへの投資は全体の1%にも満たないというのが事実だ。

このアメリカのグループは、アトレティコに投資した理由の中で、「国際的なブランドの価値、ファンの忠誠心、コロナ大流行の際の回復力」を考慮したと述べている。また、「世界が元に戻っている中、アレス社の柔軟な資本の支援を得て、アトレティコ・マドリードは、コンテンツに対する需要の高まりと拡大の機会を生かすことができる立場にあると考えています。」と付け加えた。

アレスマネジメント・コーポレーションの共同経営者であり、スポーツ・メディア分野の責任者であるマーク・アフォルター氏は、アトレティコ・ホールディングスの取締役会に参加するため、意思決定への影響は間接的なものとなる。共同設立者の一人であるベネット・ローゼンタール氏は、MLSロサンゼルスFCの株主でもあるが、今回がスポーツ業界への初進出となる。また、オーストラリア・ラグビーやプレミアリーグのチーム買収に関心のある投資家にも融資を行っている。