MLS

『好きなサッカーリーグは?』この質問にあなたは何と答えるだろうか。プレミアリーグ、ラ・リーガ、セリエA、ブンデスリーガ、リーグ1の欧州5大リーグは人気が高いが、Jリーグと答えるファンも多くいることだろう。

この中でもプレミアリーグは、運営面から改革を行なったおかげで世界1位の人気を誇る。ざっくり説明すると、各クラブに最低限の資金を分配し、資金難で選手を獲得できないような状況に陥ることを阻止したのだ。

しかし、今回は欧州5大リーグでもJリーグでもない、アメリカとカナダの一部のチームが集まる『MLS(メジャーリーグサッカー)』について紹介していこう。

MLSとは?

 

MLSとは「メジャーリーグサッカー」と言われるアメリカのチームとカナダの一部のチームが参加するリーグ。日本では、アメリカのスポーツリーグといえばNBA(バスケットボール)やMLB(野球)、NFL(アメフト)などが挙げられるが、MLSも近年成長を見せる大きなリーグだ。

28チームが14チームごとの2グループに分かれて戦い、上位7チームが優勝をかけて戦う。アメリカからは25チーム、カナダからはCFモントリオール、トロントFC、バンクーバーホワイトキャップスが参戦する。

MLSの歴史

それではMLS誕生の歴史や発展について詳しく見ていこう。

MLSの前身〜NASL〜

1967年末、17チームで構成される北米サッカーリーグ(NASL)が誕生した。当時のアメリカでは、野球、バスケットボール、アメフトといったスポーツが市場を独占しており、新たなスポーツが参入することは決して簡単なことではなかったという。

まずリーグが直面した最初の問題は、『地元出身の選手が不足していること』と『地元の人々がサッカーに関心を持っていないこと』だった。そのため、世界的に知名度を高めようとするリーグ運営陣とクラブ側は、より多くの観客を獲得するために有名選手と契約することを決定する。

そこで契約したのがサッカーの王様ペレだった。1975年、ニューヨーク・コスモスが年俸140万ドルで獲得したのだが、当時で言えば破格の金額だ。この出来事が米国サッカー界を大いに盛り上げた。

それに続いて、1977年には同じニューヨーク・コスモスにベッケンバウアーが、1979年にはロサンゼルス・アズテックスにヨハン・クライフが入団し、NASLが一気に成長路線に乗ったかと思われた。

しかし、一番大きなテレビ放映権の契約を失った他、各ブランドがNASLとスポンサー契約を結ぶことに興味を示さなくなり、1984年にリーグが消滅することとなった。

MLSの登場

1994年のアメリカW杯の直前となる1993年12月17日、アメリカサッカー連盟との繋がりの元、「国内にレベルの高いプロリーグを作る」という至ってシンプルな目的で米国のサッカーリーグが復活した。

その2年後となる1996年、10チームが2つのカンファレンス(グループのこと)に分かれることになる。この出来事がMLSが正式に発足したタイミングと言えるだろう。

西カンファレンスには、コロラド・ラピッズ、ダラス・バーン、カンザスシティ・ウィズ、LAギャラクシー、サンノゼ・クラッシュの5チームが、一方で東カンファレンスには、コロンバス・クルー、D.C.ユナイテッド、ニューイングランド・レボリューション、ニューヨーク・メトロ・スターズ、タンパベイ・ミューティニーが所属していた。

その後、MLSが正式に日の目を見たのは、1996年カリフォルニア州サンノゼにあるスパルタン・スタジアムで3万人の観客を集めたサンノゼ・クラッシュ対D.C.ユナイテッドの試合だった。

MLSの進化と発展

2年後の1998年には、初めてリーグ規模が拡張された。シカゴ・ファイアーとマイアミ・フュージョンが加わったことにより、10チームから12チームに増加。

また、マイアミ・フュージョンでは、98-99シーズンにコロンビアを代表する選手カルロス・バルデラマがキャプテンを務めることになる。ラテンアメリカ出身の有名選手が初めてリーグに参加したことで、MLSに新たな歴史が刻まれ、ラテン系のファンがMLSに興味を持ち始めるきっかけとなった。

少し時代が飛ぶが、次の10年でMLSは進化と発展の段階に入る。いくつかのチームが去り、他のチームが加わった。2007年にはトロントFCが創設され、カナダのチームとして初めてMLSに加盟。MLBのトロント・ブルージェイズ、NBAのトロント・ラプターズのような存在だ。

2011年頃にはMLSはアメリカ国内での認知度が上がっており、特に東海岸と西海岸、そして北東部で存在感を見せていた。同年にカナダの2つ目のチーム、バンクーバー・ホワイトキャップスFCが、続いて同国3つ目のチーム、モントリオール・インパクト(21年からCFモントリオール)が誕生した。

2017年シーズンは、MLSにとって大きな年となった。いくつかのチームの変更、脱退、加入を経て、アタランタ・ユナイテッドとミネソタ・ユナイテッドが参加したおかげで、MLSは設立以来最も多い22チームになることが正式に発表されたのだ。

さらに、2020年にはデイビッド・ベッカム氏がオーナーを務める「インテル・マイアミ」が25番目のクラブとしてMLSデビューを果たした。

このようにMLSは市場を拡大し続けており、ビジャやピルロ、ランパード、ベッカム、カカ、アンリ、イブラヒモビッチといった超スーパースターたちがMLSでのプレー経験を持つことになった。

リーガMX(メキシコ)との関係性と繋がり

カナダとの繋がりが強い米国だが、一方で南のメキシコとも関係はある。「リーガMXとMLSがスポーツ面や商業面で合併した場合、これ以上ない価値が生まれるだろう」。こう語るのは北アメリカに精通するエミリオ・ラバサ氏。

もし合併が実現した場合、両リーグの試算によると18億ドル近くの市場価値を持つことになるという。

実際、2018年には一つの試みとして『カンペオーネスカップ』という大会が創設された。ここではMLSのチャンピオンとリーガMXのチャンピオンが対戦する。

第一回大会は、ティグレス対トロントFCの試合で、3-1でメキシコ王者ティグレスが勝利した。しかし、2019年と2021年はMLSのクラブが優勝している。(※2020年はコロナウイルスにより中止)

さらに2019年には、『リーグカップ』が誕生し、さらに2国間の関係性が強化された。こちらの大会では、リーガMXとMLSからそれぞれ4チームずつが出場する。2021年はMLSからスポルティング・カンザスシティ、オークランド・シティSC、シアトル・サウンダーズFC、ニューヨーク・シティが、一方でリーガMXからは、ティグレスUNAL、クラブ・ウニベルシダ・ナシオナル、サントス・ラグナ、レオンが出場。レオンが2回目の優勝を果たした。

リーグ間の相乗効果は、スポーツ面だけでなく、経済面・商業面にも及ぶ。2021年8月25日にはTarget社が主催する第1回オールスターゲームが行われ、MLS選抜選手とリーガMX選抜選手が戦った。この試合は成功を収め、スペイン語放送では視聴者数の記録を更新。ESPN放送での視聴者数は合計300万人で、2017年にMLS選抜選手とレアル・マドリードとの間で行われたオールスターゲームの視聴者数の2倍となった。

また、このオールスターゲームでは、SNSでも盛り上がりを見せた。リーガMXによると、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムでの投稿は、合計で1億6070万インプレッション、250万インタラクションに達したという。

このように米国はカナダだけでなく、メキシコとも強い関係性を持つ。2026年には、米国・カナダ・メキシコの3ヵ国合同でのW杯が開催される。それまでにこれらの3ヵ国の繋がりはさらに強化されるだろう。

まとめ

以上がMLSの歴史と2026年W杯を前にした取り組みだ。いかに近隣諸国と協力して盛り上げようとしているのかが分かる。現在日本人では、久保裕也がFCシンシナティに所属しているが、果たして今後MLSでプレーする日本人選手の数は増えていくのだろうか。

おすすめ記事:【特集】知られざるサッカーにおけるスカウティングの裏側