アルゼンチン対フランスの決勝で大いに盛り上がったカタールワールドカップ。PK戦の末、アルゼンチンが勝利したが、この試合で最も衝撃を与えたのはフランス代表キリアン・エンバペではないだろうか。
前半こそ堅いアルゼンチンの守備に仕事をさせてもらえなかったが、後半徐々にリズムを掴み始める。最終的に1966年以来のワールドカップ決勝におけるハットトリックを達成した。
圧巻は一時同点となった2点目。後ろからのふわりとした浮き球をダイレクトボレー。上手く抑えの効いた鋭いグラウンダーのシュートは、ファーサイドに突き刺さった。
エンバペの残りの2点はPK。1回目はエミリアーノ・マルティネスに読まれていたが、驚異的なシュートスピードで手を弾いた。2回目は逆をついて左に流し込んだ。
振り返ってみれば、PK戦を含む3本のPKを全て左に突き刺したことになった。キーパーとの読みに勝利し、負けたとしても威力で押し切るというとてつもない選手である。
エンバペは今大会8ゴールを決め、大会得点王に輝いた。メッシの7ゴールを上回る数字だ。
通算でみても、2大会で12得点。あのブラジルの王様ペレに並んだのだ。たったの2大会でトップ7に入っているのだから驚きである。
このように23歳(カタールW杯決勝時の年齢)で歴史に名を残したエンバペだが、過去のワールドカップを振り返ってみると、フェノメノこと元ブラジル代表ロナウドに似通った部分があるかもしれない。
Kylian Mbappé’s eight goals were the most in a single World Cup since Ronaldo scored the same in 2002. 👀 pic.twitter.com/xhW6ilK1am
— CBS Sports Golazo ⚽️ (@CBSSportsGolazo) December 19, 2022
まずはプレースタイル。両者ともに、圧倒的な瞬発力とスピードを持っており、サイド突破や一瞬の飛び出しを得意としている。また、決定力が高く、「この選手がボールを持てば点を奪ってくれるのではないか」という期待を抱かせてくれる。
足元の技術だけでみるとロナウドの方が上回っているかもしれないが、総合的にはかなり似たタイプと言えるだろう。
このようにプレースタイルが似ている両者だが、一方で記録面でもロナウドとエンバペは似ている部分がある。
ロナウドは、17歳で1994年ワールドカップのメンバーに選ばれる。ただ、その時は出番がなかった。
4年後の1998年大会、21歳のロナウドは主力として4ゴールを決め、チームを決勝まで導いた。ちなみにこの1998年とはエンバペが生まれた年だ。
次の2002年ワールドカップでは、ロナウドは25歳。ブラジルが2大会ぶりの優勝を果たした大会だが、ロナウドは大会を通じて8ゴールを決めた。もちろん大会得点王だ。
お気づきの方もいるかもしれないが、実際に主力として出場したワールドカップではゴール数が全く同じなのだ。ロナウドは1998年に4ゴール・2002年8ゴール、エンバペは2018年4ゴール・2022年8ゴール。
優勝のタイミングこそ逆だったが、若きエースがそれぞれのチームを引っ張ったことには変わりない。また、決勝で複数得点を記録したという点も2人の共通点である(ロナウド2点、エンバペ3点)。
エンバペは少なくとも2回はワールドカップでプレーすることになるだろう。この調子でいけば、ワールドカップの通算得点記録(16得点)を簡単に超えることができるはずだ。まずはメッシらの13点、ゲルト・ミュラーの14点、そしてロナウドの15点と段階を踏んでいきたい。