シティ・フットボール・グループ(CFG)の黒字化はまだ先になるのか。マンチェスター・シティを中心としたサッカー持株会社は、20-21年、コロナウイルスの影響が穏やかになったことにより、前年比74%減の5290万ポンドの赤字で締めくくった。
仮に金融収益としての3867万ポンドが計上されていなければ、この赤字はさらに大きくなっていただろう。この収益は、米ファンドのシルバーレイクがCFGの株式保有に参入したことに大きく関連している。
マンチェスターシティを筆頭とした各クラブのCFGへの貢献度
売上高は、マンチェスターCの貢献により、前年同期比14.7%増の6億2459万ポンドまで伸びた。移籍によるキャピタルゲインに関しては前年同期比64.9%増の7971万ポンドに急増。残りの営業収入は20-21年にほぼ倍増し、938万ポンドとなった。
19-20年の収益の一部を翌会計年度に計上したこと、そして一定の商業・興行収入が回復したことによりCFG内でのマンチェスターシティの経常利益率は91.2%となっており、他のCFGクラブより段違いで貢献していることがわかる。
シティの売上が伸びている要因としては、チャンピオンズリーグ決勝でプレーした結果、UEFAからの収入が7637万ポンドから1億1526万ポンドに増加したことだろう。20-21年の放映権は前年比47.6%増の1億9937万ポンド、商業部門は9%増の3億729万ポンドとなった。興行収入は19-20年の5114万ポンドから20-21年にはわずか266万ポンドに急落した。
ラ・リーガ1部への昇格を果たせなかったジローナFCは、1部から2部に降格したときの降格の支援金を得られなかったため、CFGへの貢献度が50%以上減の920万ポンドとなった。CFGにとって比較的重要度の高いニューヨーク・シティは、MLSに参戦しているものの、興行収入の面でコロナウイルスの影響を受け、13%少ない2660万ポンドの収益を計上。また、オーストラリアのメルボルン・シティは750万ポンド、フランスのエスタック・トロワは540万ポンドとなっている。
シティを除くすべてのCFG所属のクラブが赤字で、マンチェスターシティが20-21シーズンにかけて得た240万ポンドの純利益を中和する形で締めくくった。スタジアムの再開やプレミアリーグの新しい放映契約によって、21-22年、完全に回復することができるのだろうか。アブダビに関連するいくつかのスポンサー契約の評価も、イングランドの新しいリーグ規定によって複雑になる可能性もある。
マンチェスターシティの財政的な持続可能性へ向けた主な課題は、人件費だ。給与支払額は5.5%増の4億5,714万ポンド、選手移籍金の償却費は13.5%増の1億7,236万ポンドであった。賃金は売上高を500万ポンドも上回る全収入の88%を占めており、これはUEFAが推奨する70%を大きく上回っている。
その結果、CFGのサッカー選手への累積投資額(選手登録権)は10億ポンドを超えたが、減価償却費を差し引いた純簿価は4億8437万ポンドであることが判明した。クラブの移籍金債務は20-21年に前年比81%増の1億6268万ポンドに急増した。実際の移籍金は、移籍元クラブとの合意事項がすべて満たされることになれば、さらに2億ポンドが追加される可能性がある。
この赤字を受けてCFGは2019年末には米ファンドのシルバーレイクから5億ドルの資金注入を受けた。更には同ファンドはシティ・フットボール・グループの評価額を48億ドルとしており、赤字でもシティには1億2000万ポンドの流動性があることがわかる。加えて投資ルートは2021年7月にも強化され、8億5500万ポンドの融資と8000万ポンドのクレジット・ファシリティ契約(いずれも2028年満期)も締結している。これらの資金はBarclaysという金融会社によって提供された。
これらによって得た資金は、特にニューヨークシティの新スタジアム建設や、マンチェスターでのイベント会場建設、そしてより多くのクラブの株式取得に充当される予定とのこと。
最新の買収は、フランスのエスタック・トロワの買収で、750万ポンドを支払い、2020年9月に資本の82.25%を取得した。同クラブは初年度はリーグ2からリーグ1へ昇格したが、720万ポンドの赤字を記録。また、2021年に米国のSoFive社と合併し、55%の主導権を保有するアマチュア競技用サッカーセンタープロジェクトも依然として赤字(20-21年に90万ポンド)となっている。
中国3部リーグの四川九牛FCはシティが33%出資しており、1321万ポンドの赤字を出したが、シティ・フットボール・グループの業績にはその赤字の一部しか連結されていない。