スペインサッカー界は、パンデミックが落ち着いた後の最初のシーズン(22-23年)を迎え、5000万ユーロの売上高を上回るという目標を持っている。ただそれは簡単なことではないだろう。2024年には必ずこの壁を超えることができると予測されているが、今シーズンはそれに近い数字になると見られている。
これは多くの要因に左右されるが、最も重要なのは移籍市場、つまり選手を売却する能力だ。リーガ・エスパニョーラは、コロナウイルスの影響で1億ユーロに近い損失を叩き出した19年〜22年を引きずらないことを望んでいる。
「収益性は来年になるはずだ」と説明するのは、ラ・リーガの経済管理部門。各クラブは、新しいオーナーの就任やCVCファンドによる多くの投資の実行によって、経済面が大きく変動する夏を経験した。
スペインサッカー界は、欧州の他リーグへの選手売却の動きが悪化する中で、新たな資源獲得の道を模索する必要に迫られている。19-20年は選手売却で得られた総収入が11億2800万ユーロだったが、20-21年にはわずか5億4200万ユーロになった。
同時に、PwCの調査データによると、パンデミックによって国内リーグのビジネスは2016年の時の数字に逆戻りし、ラ・リーガ・サンタンデールとラ・リーガ・スマートバンクが20-21年に生み出すはずだった52億6900万ユーロに届かなかったという。シーズン当初からスタジアムの観客が埋まるなど、完全に元の状態に戻るというシナリオのもと、今シーズンは利益回復のシーズンとなることが予想される。
収益の回復とファンの存在
1年以上前、ラ・リーガのハビエル・テバス会長は「2022年の夏には、コロナウイルス流行前の財務的な余裕がほぼ回復する」と説明していた。実際、今年は全てのビジネスラインがシーズン初めから回復しているため、同氏の予測は正しかった。
20-21年シーズンの経常収益の落ち込みは15.9%で、スタジアムの閉鎖、放映事業者との再交渉、スポンサーに対するブランド支出の調整などにより、6億ユーロの損失となった。18-19年のように、シーズンチケット保有者からの売上高を3億800万ユーロに戻すことが課題の一つとなっており、ファンの存在が回復のカギのひとつとなる。
また、18-19年には一般チケット収入や会員費(ソシオ)、シーズンチケット収入を合わせると9億4800万ユーロだったものが、20-21年には3億8400万ユーロになった。一方、この期間中、ラ・リーガの放映権は国内市場での収益を維持した上で、海外での大幅な再評価を受けたため、その価値を落とすことはなかった。
海外資本の参入とリーグの底上げ
レアル・マドリードやバルセロナが資金調達のためにアメリカのファンドを選んだ一方で、スペインサッカー史上最大の投資も見過ごすことはできない。CVCファンドが19億9400万ユーロを投じてリーガ・エスパニョーラに参入してからわずか1年で、1部・2部の37クラブは、それぞれインフラを刷新するためのさまざまなオペレーションを開始した。
アトレティコ・マドリードは、数週間前この「ラ・リーガ・インプルソ」の資金を利用することを発表した。同クラブは、スタジアム周辺に2億ユーロを投資し、ホテルや商業スペースを備えたスポーツ施設を建設する予定だ。
また、バレンシアに関しては、この資金で建設開始から15年経った「ヌエボ・メスタージャ」の完成を試みている。同クラブは、1億2000万ユーロをかけて新本拠地を完成させる予定だという。