今季ラ・リーガの移籍市場を盛り上げたのはプレミアリーグだった。ラ・リーガではプレミアリーグのクラブに選手を売却できたことで、今後の選手移籍におけるプランが進展したケースが多かった。最たる例として上げられるのは、ニューカッスルユナイテッドに7000万ユーロで売却したイサクだ。このオペレーションでレアル・ソシエダは単純計算で5500万ユーロのキャピタルゲインを得た。
そしてアルメリアからサディクを2000万ユーロで獲得。そのサディクは早速4節アトレティコ戦でゴールを決めイサクの去就を感じさせないプレーを見せる。一方選手を引き抜かれた側のアルメリアはサディクの売却で得た資金で二人の二十歳のストライカーを移籍市場最終日に獲得。これは同クラブのスポーツディレクターやマネージャーが望んでいたドミノ効果だ。
He gained promotion with Almeria to La Liga & Real Sociedad snapped him up.
— POOJA!!! (@PoojaMedia) September 1, 2022
Super Eagles striker – Sadiq Umar 🔥 pic.twitter.com/PKRi4d4zOp
今季の夏の移籍市場で、プレミアリーグはスペインのクラブからトータルで12人の選手を、総額2億5950万ユーロで獲得。この数字は過去最高額となっている。そしてこのデータが示すのは2つ。
まずはプレミアリーグが最もお金が動いているリーグだということ。これは周知の事実だが、もう一つ大事なことはプレミアリーグの各クラブでは下部組織の選手がトップチームで活躍しにくい環境のため海外から選手を取らざるを得ないということ。
今季ジエゴ・カルロスをアストンヴィラに売却したセビージャやイサクをニューカッスルに売却したソシエダのように、若手が育ちやすい環境のラ・リーガのクラブはプレミアのクラブを得意先としている。
しかしパンデミックが起きたときは全体的に市場が停滞してしまったことで、ラリーガの多くのクラブが得意としている移籍市場で本領を発揮できなかったことは致命傷となった。このようにパンデミックにより多面的に収入が激減した中でもラリーガでは独自のサラリーキャップ制度があり、支出を上手く調整しなければならない。これがフリー移籍で退団した選手が多い理由のうちの一つだ。
一方のプレミアリーグはラリーガほどの制限は無い上に、今日では新しいリーグ内で独自のFFPを設けようとしており、適用されればクラブのオーナーは毎年損失を出しても支出を続けることができる。
ノッティンガムフォレストのケース
毎年移籍シーズンでは欧州の各リーグを代表するビッグクラブが話題になるが、今夏の移籍市場では、ある意味ノッティンガムフォレストが一番話題になっているかもしれない。というのもヨーロッパのタイトルを多く獲得しているクラブのバックにはギリシャの大富豪エヴァンジェロス・マリナキス氏がオーナーとして付いており、今シーズンに向けて1億6200万ユーロに値する額を投資しているからだ。
これは驚くことに今季、将来的な損失覚悟にレバーを引いたバルセロナや現プレミア王者のマンチェスターシティを超える投資額だ。
フォレストはパラシュートペイメントによりプレミアリーグから1億2500万ユーロの保証があるが、それを差し置いてたとしても14-15シーズンからの累計損益は▲6300万ポンドで赤字。経営面で成功しているわけではない。
今後、フォレストなどプレミアの各クラブやプレミア自体が直面する問題としては、お金を掛ければ掛けるほどクラブやリーグは強くなり魅力的になるかという点だ。遅かれ早かれ、ブンデスリーガやラリーガのクラブが取り組んできたように金額に見合った価値、いわゆる「バリュー・フォー・マネー」に目を向けなければならない。
ラリーガ、パンデミックで増えたローン移籍やサラリーキャップに収めるための取り組みとは?
パンデミック時代にはラリーガの複数のクラブが国内での移籍市場を盛んにさせるために、リーグにもっと羽を広げられるようなルールにしてほしいと要求していた。ただし現在の体制があったからこそ、ラリーガは2019年から2021年までの間で特に損失を抑えられたリーグでもあった。バルセロナを除いて。
サラリーキャップも度々議題に上がるテーマであり、移籍市場に大きく影響してくる。多くのクラブが今季取り組んでいたのは、自クラブのサラリーキャップの範疇に抑えるために選手の1年あたりの給料を下げる代わりに契約年数を伸ばすというものだ。
そしてパンデミックの時期にはローン移籍が明らかに増えた。これは市場における移籍市場が停滞しているため、選手と完全移籍で契約せず買取義務付きローン移籍として選手を迎えるクラブが多いということだ。
22-23シーズンにはローン移籍も含めた契約更新も多々見受けられ、これは来シーズンの移籍市場に向けて1年稼ぐという意味でもクラブにとっては魅力的なオプションになる。ラリーガではこのような動向が見られるが、セリエAも同様だ。
ユベントスはFFPに抵触しないためにも今シーズン選手の年俸負担を減らす目的で移籍市場のウィンドウが閉まる最終日にアルトゥールとザカーリアをそれぞれリヴァプールとチェルシーに移籍させている。