1987年、コカ・コーラはブラジル代表と4万ドルの契約を結び、ユニフォームにロゴを付けることになった。そのわずか2年後、当時のチャンピオンであるアルゼンチン代表がフランスの自動車会社「ルノー」と同様の契約を交わした。その他にも、オランダ、コロンビア、ポルトガル、アイルランドなど、サッカーの歴史には、FIFAが定める公式ユニフォームへの広告表示を禁止するルールを掻い潜ったチームが数多く存在する。しかし現在はどうだろうか。
公式ユニフォームの広告表示禁止は、今日のスポーツ界では異例だ。W杯以外にスポンサーシップが認められていないのはオリンピックだけである。ちなみにオリンピックの場合は、大会の数週間前から禁止されている。一方で、北米の各スポーツでは、ウェアなどへのブランディングが認められるようになってきている。2017年のNBAから始まり、NHLやNFLのヘルメット、MLBのユニフォームなどに広がっている。
しかし、FIFAには、クラブワールドカップという例外がある。2005年から正式に発足した大会だ。ただし、ユニフォームの前面に表示できるのは、大会への切符を獲得したチームのメインスポンサーに限られ、その面積は200平方センチメートルを超えてはならない。
FIFAが各チームにスポンサーを付けるのを禁止した主な理由は、FIFA独自のスポンサーだけを試合で表示するためだ。広告の売上は、2021年にFIFAに1億8020万ドルをもたらした。同年1億3130万ドルを売り上げた放映権収入を差し置いて、最も重要な収入源となっている。
コカ・コーラとビザでグローバル・スポンサーシップの責任者を務めたことのあるリカルド・フォート氏は、「ユニフォームへのブランド表示を導入することは、FIFAブランドにとってかなり深刻な影響を与える」と説明する。「スポンサーは常に、より多くの知名度とリターンを獲得するために、多くのスポンサーがいる場所に介入しない」と付け加えた。
また、ユニフォームに広告を出すことは、風評被害的なリスクも伴う。「グローバルパートナーである大企業は、すでにスポンサーシップで過剰なまでに存在感を示している」と戦略アドバイザーのバエズ氏は説明する。「しかし、ユニフォームにスポンサーを付けることを許可することで、確立されていないブランドや出所の怪しいブランドにも門戸を開き、特にブランドの切り替えが多い場合は、異なる風景を作り出すことができる」と付け加えた。