レッドブル・レーシングは、F1の中でも特別なチームです。オーストリアのチームとアルファタウリは、自動車会社では唯一のチームであり、またスクーデリア・トロ・ロッソもレッドブルが所有しています。他の参戦チームは自動車関連企業です。
しかし、レッドブルが2つのF1チームに出資することに意味があるのか。答えを出すにはレッドブル・レーシングがエナジードリンクのプロモーションのために存在していることを理解する必要があります。
一風変わったマーケティング戦略ですが、これもレッドブル・レーシングのスタイルです。このブランドは、革新的な戦略でイメージアップを図ることで知られており、他には、モーターレースやスカイダイビング、マウンテンバイクなどのエクストリームスポーツとも密接な関係があります。レーシングチームを所有することは、レッドブルにとって最強の戦略カードであり続けているのです。実はF1シーズンに登場するだけで約20億人以上の人々にブランドイメージを植え付けることができると言われています。
レッドブルがF1チームを持つためには、毎年、1億5千万ドル(約170億2770万円)以上の投資が必要ですが、その利益は約1,000万ドル(約11億3500万円)と十分の一にも満たしません。しかし、F1にとどまる理由は収益源を狙っているのではなくF1が広告力のあるプラットフォームだからです。レッドブルがF1チームから得ているブランド露出は、年間3億2千万ドル(約363億2600万円)の価値があると言われているため、つまり、レッドブル・レーシングは半分のコストで、2倍の巨大な広告プラットフォームを手に入れることができるのです。
しかし、将来への不安は拭えません。2020年に、エンジン・サプライヤーのホンダは2022年付けでF1から永久に撤退することを発表しました。これにより、自作のエンジン開発に向けた「レッドブル・パワートレインズ」の設立を決めています。自動車メーカではないレッドブルは、エンジン開発にため数百万ドル級のコストがかかると言われており、大きな賭けに出ていることになります。近年のF1を盛り上げてきたチームの今後に注目しましょう。