eスポーツ業界は、その市場規模が、収益と観客数の点で あらゆる従来のスポーツを圧倒していることがわかる。
eスポーツ市場は、ノンエンデミックブランド(ゲーム開発者、ゲームパブリッシャー、ハードウェアメーカーなどのeスポーツのエコシステムに属さないブランド)の活躍の場になりつつある。
これは、「戦略や経営に関する問題の解決に焦点を当てたグローバル戦略コンサルティング会社」マッキンゼー・アンド・カンパニー社がドイツで行った調査によって明らかになったものだ。
この調査結果によってノンエンデミックブランドの多くのマーケティング責任者がeスポーツへの参加について抱いていた疑念が払拭され、eスポーツ製品への投資が動機付けられた。
近年ではeスポーツにおけるノンエンデミックブランドのスポンサー率が上昇しており、上記の調査によると、エンデミックブランド43%に対し高い53%の上昇率であることが示されている。
成長する市場
このeスポーツ業界では、収益と観客数の点で多くの従来のスポーツを超える市場規模があることを示している。
2019年にはeスポーツ市場の売上高9億5,000万ドルに到達している。市場を調査している団体は、2022年までに20億米ドルを超えると予測している。
業績から、収益の大部分(58%)はスポンサーからによるものであり、この成長に伴い、5億人を超えるファンやカジュアル視聴者が見込まれている。
先を行くコンシューマー像
年齢、教育、収入の人口統計からはeスポーツの消費者がこれまで想像していたよりも高い賃金で働いていることがわかる。
eスポーツ製品の消費者は主に若い(平均26歳)、デバイスに精通した、高い教育を受けた(70%以上)男性である。この人物像は、eスポーツのスポンサーになる投資家や企業にとって、消費者と自社ブランドの信頼を高めると同時に優れた人材の雇用を促進する機会であると考えている。
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、「Esports and the next frontier of brand sponsorships」という調査において、ソーシャルメディアにある情報を収集した後に人工知能(AI)で分析した消費者データを用い、ドイツの平均人口とeスポーツの消費者共通性のデータを比較検討した。
本調査では、eスポーツのカテゴリーを軸に、ライフスタイルの特徴的な関心事を以下のように4つに分類した。
1.成熟したeスポーツ(League of Legends、CS:GO)のファンは、自己啓発に関連した製品やサービスに魅力を感じ、Eコマースやビジネス、車などに興味を持つ。
2.新しいeスポーツ(フォートナイトやオーバーウォッチ)の消費者は、個人の外見に独自のこだわりを持っている。
3.スポーツシミュレーションゲーム(FIFA)のファンは、さまざまなスポーツに関心が高く、また、自身の健康にも気を配っている。
4.隙間eスポーツ(StarCraft II)の消費者は、文学や知識収集、旅行、スマートデバイスの使用などに関心を持っている。
スポンサーの投資のリスク
どんな投資でもそうだが、スポンサーシップにはリスクが伴う。
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、「eスポーツの世界でスポンサーになろうとするブランドは、どの程度のリスクを本気で負うのか、業界によくある誤解は何かを見極めるべきだ」と提案している。マッキンゼーはその誤解を大きく3つの分類に分けている。
信憑性
ゲームのハイライトMVP賞のスポンサーになったり、ゲームに特化した分析を提供するなど、活性化戦略を持つことは重要だ。
しかし、eスポーツの場合は、特に企業がeスポーツに対して本当に興味をもっているかが重要だ。例えば、ESLトーナメントの大スポンサーは、小スポンサーに比べて4倍も目につきやすい。
しかしそこにはリスクがあることもわすれていはならない。eスポーツの世界に対する真の関心がeスポーツを取り巻く人たちに伝わらなかったりすると、その目立ち方は裏目に出ることもある。
業界の不安定さ
Eスポーツは変動しやすい業界だ。新しいゲームタイトルやチーム、ストリーマーが誕生しては消えていくスピードは、従来のスポーツとは比べものにならないほど速い。
eスポーツ選手の入退団は他のスポーツと同じだが、ファンのロイヤリティ(関心)はチームよりも選手に向けられるのが一般的である。
こうした動きに対応するために、ブランドはeスポーツの基本的な知識だけでなく、それ以上のものを分析する必要がある。eスポーツは消費者数が多いため、ブランドマネジメントのスタッフの中に、知らず知らずのうちにeスポーツの熱狂的なファンがいるのではないだろうか。
だからこそキャンペーンのアイデアに関しても、内部からの意見を聞くことができる。もちろん、こうしたスタッフの知識やアイデアは、市場の新しいトレンドと技術開発、または自社の資産パフォーマンスの結果などの細かな分析によって裏付けられていなければならない。
風評
スポンサーシップ契約を結ぶ際、特にリアルな暴力シーンを含むゲームに参加した場合、既存の顧客層に対する風評リスクが発生することを懸念するブランドもある。
しかし、ドイツの消費者を対象にした調査では、そうでないことがわかっている。この調査によると、eスポーツの内容を知っている消費者の約9割が、eスポーツに対して肯定的または中立的な意見を持っている。
eスポーツへのブランドの関与を否定的に捉える人は、わずか5%でした。さらに、その5%のうち、スポンサーの名前を正確に言える人は10分の1以下だった。一方、eスポーツの愛好家では、ブランドの認知度が高いことがわかっている。
したがって、この種の潜在的なリスクを認識し、それぞれの具体的な状況において慎重に評価することが重要であるが、実際のリスクの程度は、”ドイツの平均的な消費者”にとっては大きなものではないように思われる。
こういった結果からノンエンデミックブランドや企業にとってeスポーツ市場は大きなビジネスチャンスとして見ており、参入に必要な知識と人材確保が活発になっている。