デジタルトランスフォーメーション(DX)やスポーツ産業の現代化に関するコンサルを行っているN3XT Sportsは、業界が持続可能で競争力のある成長を遂げるための機会を見出す可能性を高めている。
同社の代表取締役のムニール・ゾック氏がファンデータがサッカーのデジタル変革をどのようにサポートしているかを語る。
Q1 スポーツ業界のデジタル化とは何か、そしてなぜ重要なのか?
デジタルネイティブのファンは、リッチで没入感のあるスポーツ体験を期待している。人々のメディア消費習慣が従来のメディア(テレビやラジオ)から離れて行く中、スポーツ団体とそのパートナーにとって、消費者が誰で、どこでコンテンツを消費しているかを理解することがかつてないほど重要になってきている。
デジタル・トランスフォーメーションは、一部の人にとって困難で、高価で、時間がかかりすぎるように見えるかもしれないが、デジタル化によって、デジタルテクノロジーに投資する人に大きな財務的リターンが見えて来る。
これにより、ファンとのより深いつながりを確立し、重要なデータを集めることにより、消費者体験をパーソナライズし、個々の要求を満たすことができる。
デジタル変革に投資することで、組織は新しく優れたデータを活用し、加入者層の拡大を目指した新しいデジタルコンテンツ、製品、サービスを開発することができる。
また、スポンサーシップ・パートナーには、スポーツ団体のファン層をどのように取り込み、転換させるかについての洞察を提供できることが明らかになる。
Q2 データ主導のアプローチを採用することで、サッカー業界はどのように、情報に基づいたビジネス上の意思決定を行うことができるのだろうか?
従来、ニュースレターの登録、モバイルアプリのダウンロード、チケットの購入は、それぞれ別のデータサイロで取得されており、サッカークラブ、リーグ、連盟の内部で、連動したファンデータを構築することは不可能だった。これは現在の主な課題であり、データ収集に全く異なるアプローチが必要となっている。
この課題に対する改善策としては、ファンがいつ、どのように組織と関わっているかを特定する、モバイルおよびデスクトップ向けの顧客データ・ダッシュボードの実装が含まれるだろう。
データが合理化されれば、ファンのデジタルな行動に基づいて、いつ、どのようにファンと関わるべきかを組織として考えることができるようになる。
データ収集能力の向上により、組織はファンを理解できるだけでなく、ファンとの関係を最適化する強力な顧客関係管理ツールキットを開発し、業務効率を促進する。さらには運用コストの削減に役立つデジタルファーストのエコシステムを下支えすることができる。
Q3 サッカーのデジタル変革はまだ始まったばかりだが、なぜ中小規模の組織でもデジタル変革をするべきなのか?
デジタルトランスフォーメーション、データリテラシー、データに基づく意思決定は、資金が豊富な組織だけのものではない。誰でもできること。ただ、その課題と、何もしない場合のコストを意識することが重要となってくる。
デジタルトランスフォーメーション戦略を策定する際、組織はまず企業目標を設定し、理解しないといけない。そうして初めて、デジタルの観点から経営を改善できる箇所を特定することができる。
これは、テクノロジー、運用プロセス(経営)、ビジネス能力をカバーする3つの要素に分解されます。これらは「黄金の三角形」と呼ばれ、デジタルトランスフォーメーション戦略を構築するための原点となる
Q4 コロナウィルスは、サッカーのデジタル変革にどのような影響を与えたのか?
2年前、コロナウイルスの感染でサッカーが閉鎖的な環境に追いやられたとき、それはスポーツにとって赤信号のような日だった。マッチデーやスポンサーシップの収入が激減する中、サッカー業界は、静観するか、変化を起こすかの選択を迫られていた。
現在の状況を見ると、短期的な回復、長期的な成長、将来の成功のためには、ファンデータを収集できる強力なデジタルインフラとD2Cを所有することが必要不可欠であると、コロナウィルスが人々に認識させたことは確かだ。
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