今回の記事は特別編。なんと元Jリーガーで現在YouTuberの那須大亮さんにお話を伺うことができた。那須さんは、17年間の現役生活で6クラブに在籍し、J1通算出場は400試合に上る。そんな那須さんが肌で感じてきたJリーグの成長とは?また、那須さんが望むJリーグの今後の形とは?
17年間でのJリーグの変化とは?
質問:2002年にプロになられてから2019年に引退されるまでどのような変化や差を感じられましたか?
所属クラブ(2002年:横浜Fマリノス、2019年:ヴィッセル神戸)が違うので一概には言えませんが、リーグ全体におけるファンの数が年々増えていったので、Jリーグの人気度に関してはすごく変化があったと思っています。
また、近年各クラブは地域密着に重きを置いています。それが年々形になっているなという印象はあるので、観客動員において、一過性の人気ではないと感じています。
質問:地域密着というと?
各クラブは、毎試合ホームに訪れる来場者も含めて、選手・チーム・地域の交流の中で集客に繋げたり、地域貢献・地域創生のようなイベントを開いて地域を活気づけたりしています。
僕が所属していたクラブはそのようなことに取り組んでいるクラブが多かったので、そういう部分で着実にコアなファンが増えてきているなとは感じています。
質問:やはりW杯などのビッグイベントを重ねるごとに増えていくのですか?
代表レベルが活躍すれば、もちろん認知度が上がっていき、人気が出るのですごく大きな要素だと思います。日本国内では、W杯に出る出ないでサッカー人気が大きく左右されるほどです。
多様性と言いますか、日本には様々なスポーツがありますが、日本のサッカーファンは「サッカー以外にも好きなスポーツがある」という場合も少なくない。その時々の旬のスポーツによって、対象が変わってくるのです。
そこで、代表という『人気スポーツ』が盛り上がれば、その後のリーグに響くという事実は間違いないので、そういう意味ではJリーグ認知度向上の要因の一つとして代表の活躍は大事だと思います。
ビジャなどの一流選手は『人間性』が凄い!
質問:最近は海外経験のある選手も多くJリーグでプレーしていますが、昔と比べるとリーグのレベルはどうですか?
それに関しては、昔も個人レベルでは能力の高い人がたくさん居たので、引退した時と比べると大きな差は感じたことはありません。
ただ、最後に所属したヴィッセル神戸では、イニエスタ選手やポドルスキ選手、ビジャ選手といった世界的な選手とプレーし、彼らのスキルや人間性を身近に肌で感じることができたので、その点では大きな出来事だったと思います。
だからといって過去の選手が劣るかと言われると、決してそういうわけではありません。2002年当時にも個性のある選手やJリーグを引っ張る選手たちがいたので、時代によって能力が変わるわけではないということは強調したいです。
質問:スキルはそれほど変わらないとのことですが、『人間性』とはなんですか?
イニエスタやビジャの人間性に関しては、ピッチ内のみならずピッチ外でもお手本となる振る舞いをしてたことが印象的です。スポーツ選手としてサポーターを大切にする姿からはは良い影響を受けましたし、僕だけでなく他の多くの所属選手にも模範となる行動をしてくれていました。
正直、彼らほどのキャリアがあれば、真剣にファン対応などしなくても良いのではないかと思ってしまってもおかしくないですが、そこを疎かにせず細かく丁寧にやっている姿は、すごく印象的でした。
質問:2002年以降は着実にファン数は増えていっていますよね?
コロナ禍で無観客試合になったり、スタジアム入場の人数制限がかかったり、声を出して応援ができないなどあるので、ずっと伸びているとは一概には言えません。しかし、コロナ禍の前で言えば、観客動員数は徐々に上がってましたし、各クラブの人気度は少しずつであっても伸びていっていたと思います。
質問:それこそ地域密着も影響しているということですか?
もちろん地域密着だけではありませんが、それも一部の要因ではあります。例えば川崎フロンターレが最たる例なのですが、地域とサポーターが強い繋がりを持っています。サポーターがクラブの一員として地域と共に歩んでいくと言いますか。川崎は目に見える成果として地域密着に繋げられたチームですし、全チームのロールモデルになれるチームだと思っています。
一部の要因ではありますが、細部にこだわり、しっかりと地に足をつけてやってきたことが結果に繋がっているのではないでしょうか。
サッカーで夢と希望を与えたい
質問:Jリーグの国際的な注目度は?
イニエスタ選手もそうですが、世界的なスター選手がJリーグで活躍しているというのは、リーグを海外から見た時、注目を浴びる大きな要素の一つだと思っています。そしてもちろん、日本代表チームがW杯に出場するということ、そして今年がワールドカップイヤーであることも、注目度向上に繋がります。
グローバルに考えると、アジア諸国も含めてJリーグは注目されているリーグの一つだと思っているので、代表チームがW杯に出場するということは、海外からの注目度も上がるのではないかと思います。そして最近、日本人でJリーグから海外へ羽ばたいている選手もたくさんいるので、W杯出場は様々な面でプラスに働きます。
質問:今後のJリーグについて
先ほども言った通り今はコロナ禍で、クラブとしても厳しい局面を迎えていると思います。それでも、声を出さない新しい応援モデルなど、Jリーグ自体がチームだけではなくサポーターと一緒に成長していくという姿が見られます。
また、人気という面では、日本のスポーツ界ではやはり野球がトップを占めていますが、そこに追いつくどころか追い越すくらいの人気になって欲しいという思いもあります。
サッカー文化は『世界共通語』。どの国でもサッカーは文化に根付いており、生活の一部のようになっているので、Jリーグでも同じように多くの国民の方々の生活の一部になればいいなと考えています。
今、YouTubeなど僕がやっている活動の中には、そのようなきっかけの一部になって欲しいという思いがあるので、サッカーがよりたくさんの人に夢と希望を与えるものになって欲しいなと思います。
【プロフィール】
那須大亮
1981年生まれ。鹿児島県南さつま市出身の元プロサッカー選手。YouTuber。
現役時代はのポジションはDF。アテネオリンピックではキャプテンとしてプレーし、Jリーグでは6クラブで活躍。J1通算400試合出場を達成した。現在は、2018年7月に開設した自身のYouTubeチャンネルで、サッカー系のコンテンツを中心に、400本以上の動画を作成し、38万人チャンネル登録者を更新している。