フランスリーグ1

皆さんはサッカークラブといえば、どのチームを思い浮かべるだろうか。リバプールやマンチェスター・シティといったプレミア強豪勢?レアル・マドリードやバルサ?それともバイエルン・ミュンヘンやPSG?

もちろんこれらのクラブは優秀な選手が揃っているため魅力的だ。全ポジションに世界トップレベルの選手がおり、ハイレベルな試合を繰り広げる。

では、一旦クラブ目線に立ってみよう。スター選手を獲得して試合に勝つことは大切だが、一企業としては利益を出すことも重要になる。いくら優秀な選手を高額で獲得できたとしても、その選手が怪我などで全く出場できずに売却値が下がってしまうとなれば、クラブとしては大きな損失となる。

お金をかけて選手を補強することは、ファンにとっては魅力的に映るかもしれないが、クラブにとっては一つの投資とも言える。高額であればあるほどリスクは増えていく。株や仮想通貨の投資と同じようなものだ。

さて、欧州の第一線で躍動する、いわゆるビッグクラブは、大金を費やして選手を獲得している場合が多いが、実はクラブ創設以来、わずか1選手にしか完全移籍で移籍金を支払っていないクラブがあるのをご存知だろうか。

それは、フランスリーグ1の「クレルモン・フット63」だ。21-22年にクラブとして初めてリーグアンで戦い、17位で残留を果たした。

同クラブで唯一支払いが行われたのは、16-17年にセネガル代表FWファマラ・ディエディウを獲得した時。それでも移籍金はわずか380,000ユーロだった。同選手は、2015年冬にレンタルでクレルモンに移籍すると、続けて15-16年も同クラブでプレー。2016年夏にレンタル元のソショーから購入し、1日後にアンジェに売却した。この際、160万ユーロでの売却に成功しているため、単純計算で120万ユーロ以上の利益を生み出すこととなった(参照:Transfermarkt)。

1990年に現行のクラブが発足して以来、同選手以外は全て下部組織からの昇格やフリー移籍、ローン移籍での獲得であり、いかに節約しているかが分かる。また、ビジャレアルやバルセロナといったフランス国外のクラブの下部組織からも選手を獲得するなど、広い選手網も持つ。

21-22年のクレルモンは、大金をつぎ込まなくても、上手くやりくりすれば欧州5大リーグで残留できるということを証明した。今後どのような経営、そしてプレーを見せていくのか注目だ。


クレルモン・フット63とは?


クレルモン・フット63は、フランス中央部のクレルモン=フェランに本拠地を置くクラブ。クラブ自体は1911年に発足していたが、現在の名称「クレルモン・フット63」になったのは1990年のこと。

当初は6部リーグでプレーしていたが、1993年に初めて5部リーグに昇格。そして翌年には4部リーグに昇格するなど順調な滑り出しを見せた。その後フランスのカップ戦で快進撃を見せるなど注目を集めた。

3部リーグに昇格したのは、2000年のこと。1999年に見事4部リーグ優勝を果たした。そして、2002年に2部リーグへの昇格を決める。しかしその後は2部と3部を行き来することとなった。

再び2部リーグに昇格したのは、2007年。それ以降は、リーグ・ドゥで中位以上をキープし、いつしかの1部リーグ昇格の夢を持ち続けた。

そしてついに20-21年、2部リーグを2位でフィニッシュし、クラブ史上初となるリーグ・アン昇格を達成した。初めての1部リーグでのプレーとなった21-22年は9勝9分20敗で17位となり、ギリギリではあるが降格を免れた。マルセイユ(21-22年2位)やレンヌ(同4位)、ニース(同5位)、リール(同10位、前年王者)といった格上クラブにも勝利を収めており、将来が楽しみだ。

クレルモン・フット63は、フランス男子プロサッカーリーグで初めて女性監督が指揮したクラブ。初の女性監督はエレナ・コスタ氏だったが、1ヶ月半ほどで辞任。その後コリン・ディアクル氏が3シーズン監督を務め、同氏はクレルモンを去ったのち、フランス女子代表チームの監督に就任することとなった。

(クレルモン・フット63の公式HPより一部抜粋)