アルゼンチン代表

アルゼンチン代表の1986年以来の優勝で幕を閉じたカタールワールドカップ。絶対的エースのメッシを中心に、全選手がそれぞれの役割を全うするべく献身的なプレーを見せた。

今大会の滑り出しは最悪なものだった。グループステージ初戦でサウジアラビア相手に敗れ、一気に追い込まれる。一時はグループステージ敗退も考えられたが、何とか2戦目のメキシコ戦から持ち直した。

やはり流れを変えたのは、メキシコ戦でのメッシのゴラッソだろう。ペナルティーエリア外から左足を鋭く振り抜くと、ボールはオチョアも届かない右隅に突き刺さった。このゴールがアルゼンチン代表の悪い雰囲気を一蹴したように見える。

その後はラウンド16の試合まで難なく勝ちきったが、準々決勝で一つ目の山場を迎えた。いつも通り先制するも、後半試合終了間際に追いつかれ、最終的にPK戦までもつれ込む激戦となったのだ。

流れは圧倒的に土壇場で追いついたオランダ寄りだったが、延長後半途中に出場したディマリアが勢いをもたらすと、PK戦では強心臓の持ち主エミリアーノ・マルティネスの2本のPKストップもあり、何とか準決勝進出を果たした。

続く準決勝では前回大会準優勝のクロアチアにほとんど仕事をさせず、2014年以来の決勝進出を決めた。悲願の制覇まであと一歩だ。

そして迎えたフランスとの決勝。前回王者との戦いは今まで以上に難しいものになると予想された。それでも試合の流れを掴んだのはアルゼンチンだった。

試合開始後からフランスにほとんど決定機をつくらせず、攻撃のキーマンであるグリーズマンを初め、エンバペやデンベレ、ジルーなどを完全に封じ込む。結果的に前半の内に2点を決め、そのままアルゼンチンが優勝するだろうという雰囲気に変わった。

この試合で最も活きたのは、ディマリアの左サイドでの采配だ。左利きでカットインが得意であるため、試合開始時は右サイドで起用されることが多いが、スカローニ監督は最初から左サイドに置いた。

この采配が功を奏す。右サイドでメッシらが攻撃を組み立てると、フリーの左サイドへ展開。そこからゴールへ向かうという一貫した攻撃スタイルでフランスゴールを脅かした。

しかし、フランスも黙ってはいない。ジルーとデンベレという主力を前半途中で交代させ、ここまでほとんど出番のなかったコロ・ムアニとテュラムに出番を与えた。

徐々に流れを呼び寄せると、ディマリアが交代してから一気にフランス寄りに。長身の2人の工数をかけない攻撃はロメロとオタメンディを苦しめた。

そして後半35分にはオタメンディがPKを与えてしまう。エンバペが落ち着いて決め、ついにフランスに得点が生まれた。

何とか逃げ切りたいアルゼンチンだったが、直後にメッシがボールを奪われると、素早いカウンターからエンバペに同点ゴールを許してしまう。試合は一気に振り出しに戻った。

その後もフランスが怒涛の攻撃をしかけるも、試合はそのまま延長戦に突入。アルゼンチンにとっては悪夢、フランスにとっては夢のような展開となった。

延長前半は両者得点が生まれず2-2のままだったが、延長後半に再び試合が動く。流れるような連携からディフェンス陣を翻弄し、メッシが右足で勝ち越しゴールをあげた。

しかしそのまま終わらないのがワールドカップ決勝。エンバペの放ったシュートがモンティエルの手に当たりPKの判定。再びフランスが同点に追いついた。そして試合はPK戦に突入する。

ワールドカップ決勝でPK戦が行われるのは、1994年、2006年に続く3回目。非情な決め方であるが、これしか方法はない。

両者のGKに注目が集まったが、エミリアーノ・マルティネスが1本をストップした一方で、ロリスはほとんど逆をつかれる。アルゼンチンが36年ぶりの優勝を果たした。

それでは、全7試合を戦ったアルゼンチン代表の26選手を評価していこうと思う。筆者は今大会のアルゼンチン代表の試合を全てライブで視聴している。

リオネル・スカローニ(A+)

往年のレジェンドらとともにチームを率いた若き指揮官。コパアメリカに続き、ワールドカップも制覇するという偉業を成し遂げた。選手起用もほとんど的中しており、文句なしの大会だったと言えるだろう。