上船利徳

ALLSTARS CLUBがスポンサーとなっている相生学院高等学校のサッカー部で、部内でのリーグ「淡路プレミアリーグ」が開催される。

外部からはチームを招待せず、参加チームの選手は全て相生学院のサッカー部のメンバーで構成されている。

「そしたら練習試合と同じでは?」と感じるかもしれないが、この「淡路プレミアリーグ」こそ相生学院の育成法の真髄なのだ。

淡路プレミアリーグとは

今年の六月に始まった第一回淡路プレミアリーグは3チーム(J出身選抜、県内選抜、県外選抜)がホーム&アウェイの試合を行う。第一回リーグは小規模だが、第二回大会からは8チームに増えるという。

最終的には部内で15チーム組み、よくあるプロのリーグ戦のように長期的に何試合も戦うといったフォーマットにしていく。

上船氏はこのリーグで行われる試合は、決して練習試合ではなく公式戦という認識を選手たちにさせている。ホームとアウェイがあり、ホームチームには手厚い応援が付いているという。

また試合の様子をカメラやビデオで撮影される。これは斬新なアイデアに見えるが、取り組んでいることとしては”プロの疑似体験”なのだ。

驚くことにこのリーグ戦を主催しているのはこのリーグに出場する選手(学生)たち。選手たち自らで準備、主催することで人間形成や考える力を身に付けてもらうのだ。

相生学院では選手としてもだが、人間としても成長してもらうことをコンセプトとしている。また人間性もプロになるための評価として重要な要素となっていることも決して忘れてはいけない。

上船総監督が考える淡路プレミアリーグで採用したプロへの育成法

この淡路プレミアリーグで、上船氏が大事にしたいことが「プロを目指す上でのモチベーションを選手全員に持たせること」だ。従来でよく目にする育成法として、一つのクラブや部活内でAチーム、Bチーム、Cチームといった序列をつけてしまうことがある。

BチームやCチームはそれぞれ練習試合でも相手のBチーム、Cチーム当たることが多い。そういった試合で選手は活躍できたとしても「BやCの枠組みで活躍できただけだ」と考えたり、あるいは外部からそう見られたりする

つまりこの序列分けが選手の自信を下げてしまったり、プロへの意欲を低下させることにも繋がる。

淡路プレミアリーグではそのような序列でチームを分けるのではなく、選手の個性あるいはフォーメーションによってチームが分けられるため、序列分けの弊害を防ぐことができる。その結果モチベーション向上にも繋がるわけだ。

また他にも試合ごとにマンオブザマッチも選出し、一番活躍した選手を際立たせることによって、上記で述べた”プロの疑似体験”をさせることができる。リーグが終わればリーグのMVPや得点王、アシスト王といった称号も与えることで、自他ともにプラスの方向に評価できる仕組みを作っている。

上船氏のメソドロジーの一つとして「練習のときは一番謙虚に、試合のときは一番王様に」というメンタルを選手たちに植えつけることがある。

この淡路プレミアリーグでは選手たちが平等に公平な見られ方をするため、良いパフォーマンスをすれば、”メディア”にも取り上げられるし周りの人からABCといったフィルターを掛けられず評価される。

そうすることで選手たちが、試合のときに王様になろうとするメンタルを備えるようになるだろう。